2017年2月15日水曜日

『入信します、私も』【変態の科学】




「アイツは一体、どうしたのだ。会社で何かあったのか?会社で何か辛いことでもあるのか?」

ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏に問うた。

「アイツは、君の会社の同僚だろう」
「アイツ?」
「そう、この鹿だ」

ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏に一枚の写真を見せた。



「何者だ。この鹿は?」
「一般には『怪鹿』と云われている」
『怪鹿』?」
「しかし、その正体は君の会社の同僚であることはワシには分っている」
「ア、ア、アオニヨシか?」
「そうだ、アイツだ。糞で分った」
まあるい糞か?


「臭くてたまらなかった!」
「アオニヨシが『怪鹿』であったのか」
「そんなことはとうに分っていたではないか」


「アオニヨシがどうしたというのだ?」
「『入信させて下さい、私も』と云ってきたのだ」
「『入信』?そうか、君は、やはり宗教団体を主宰しているのだな」
「ワシは驚いた。しかし、奴は云うのだ『<変態の科学>教団の前の庭には、鹿がいるべきでしょう』、と。『出家させてほしい、とは申しません。<変態の科学>では、出家は6000人に一人しか認められないのでしょうから、入信だけでいいので』とも云った」





「『変態の科学』?君はやはりスコセッシの『沈黙』に影響され、宗教を始めていたのだな」
「いや、知らん、知らん。ワシはそんなものをまだ始めてはおらん」
「まだ?....そうか、君はやはり武道『変態道』を極め、それを昇華させ『変態の科学』なる宗教を興していたのか!」
「ウッ。知らん、知らん」
「君はその昔、アオニヨシに窮地を救ってもらったことがあるのだから、『変態の科学』のマスコット鹿にしてやればいいではないか。それに、アイツは『すすきの』好きのようだから、『変態の科学』に相応しい存在ではないか」




「知らん、知らん、教団を、いや、事務所を通してくれ!」










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