「『すすきの』には行ってないそうだ」
エヴァンジェリスト氏は、カレの方をできるだけ見ないようにして言った。
「ルスツなんだそうだ、『鹿』が行っていたのは」
カレは臭いのだ。
「北海道に行ったのは、ただスキーをする為だけだと言うのだ。人間並に2足でスキーをしたらしい」
臭うのはパジャマからだと思っていたが、パジャマの他に、股間からも異臭がしているようだ。
「ビエール、聞いているのか?」
ビエールと呼ばれた男は、それまで股間を触っていた右手を自らの鼻に持っていき、「ふーっん」と息を吸った。
「ツチノコは、パンツの中にしまってくれないか、臭くてたまらん」
「ツチノコではない!毒マムシだ、大型の毒マムシだ」
「女性を狂わせる毒だな」
「その毒マムシも衰えてはきたが」
「形からしてマムシというよりもツチノコではないかと思った。ズドーンと太いからな」
お下劣な老人たちだ。
「太くて長い毒マムシだ。アイツも『野生』を発揮しに『すすきの』に行ったに違いない」
「しかし、『鹿』はルスツにしか行っていないと言い張っていた」
「君は、アイツの言うことを鵜呑みにしているのか」
「では、人間鹿は嘘をついているのか?」
「嘘をついてはいない」
「では、やはり『すすきの』には行っていないのか」
すると、ビエール・トンミー氏は、パジャの上に着ていたジャケットをとり、どこかの国の大統領のように両手を上げ、言った。
「いや、『すすきの』に行ったのだ。アイツがルスツに行ったというのは、”Alternative fact”なのだ」
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