「アンタたちはいいのか?関口知宏にあんなことを云わせておいて」
番号非通知でかかってきた電話に出るなり、相手はそう切り出してきた。
「はあ?君は誰だ?」
失礼極まりない電話だ。
「『週刊聞醜(しゅうかん・ぶんしゅう)』だ」
「え?週刊文春?」
「アンタは、老眼だけでなく、老耳か!いいか、『しゅうかん・ぶんしゅう』のトビマスだ」
「なんだ、そりゃ。切るぞ、この電話」
「アンタもアンタの友だちのビエール・トンミー同様、意気地なしだな」
「ビエール・トンミー?ビエールを知っているのか?」
「アイツは、『週刊聞醜』で変態霊インタビューをしないかと誘ってやってのに、返事がない」
「はあ?変態霊インタビュー?」
「ビエール・トンミーのことはまあいい。それよりも、アンタたちはいいのか?関口知宏にあんなことを云わせておいて」
「関口知宏?何のことだ?それに、アンタ『たち』って、私と、他に誰のことだ?」
「エヴァンジェリスト氏だ。ビエール・トンミーの他のもう一人のアンタの友人だ。二人しかいない友人の内、イケメンな方の友人だ」
「私とエヴァンジェリスト氏が、関口知宏にどうだと云うのだ?」
「アンタたちも見た通り、NHKのBSで放送した『関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅』の『イギリス編第2回』で、カーディフからバース・スパに向う電車の中で老婦人に『あなたは学生さん?』と訊かれ、関口知宏は、『プロの旅人(kind of professional tarveller)』と答えたのだ」
「な、な、なんだと!」
「そうだ、そうなんだ。関口知宏は自分のことを『プロの旅人』と云ったのだ」
「ほ、ほ、本当か?!」
「私は生まれてこの方、嘘というものをついたことはない!」
「トモの奴….」
「『プロの旅人』と云えば、君か、アンタのイケメン友人のエヴァンジェリスト氏のことではないのか?」
「そうだ、その通りだ」
「アンタたちは、関口知宏に『プロの旅人』の称号を譲ったのか?」
「いや、譲ったりなんかしていない」
「まあ、世間的には『プロの旅人』は、関口知宏だな。あれだけ、日本国内も世界も鉄道の旅で回っているのだからな。しかも、天下のNHKの番組でだ。一方、アンタは、Blog『プロの旅人』を半年以上、更新できないでいたし、エヴァンジェリスト氏は、病になり、出張は激減しているからな」
「えっ!君はエヴァの病気のことを知っているのか?」
「アンタたちに『プロの旅人』を名乗る資格はない!ハハハハハ」
トビマスと名乗る男は不敵に笑うのであった。
「君は一体、何者なのだ?」
『ツ-、ツーツ~』…しかし、電話はもう切れていた。
怪しい奴だ。ビエール・トンミーも奴に絡まれているのか…….
変態霊インタビューなんて何のことか知らないが、迂闊に応じると怪我をしそうだ。ビエールもそう思っているに違いない。
『週刊聞醜(しゅうかん・ぶんしゅう)』なんて週刊誌、見たことも聞いたこともないが、私の電話番号をどうして知っているのか…….怖い........
今度、連絡があったら、云ってやる。
「ノー・コメントだ。事務所を通してくれ」
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