2018年7月16日月曜日

夜のセイフク[その7]





「ビエ君は、何の『会』がいいと思う?」

エヴァンジェリスト君は、同級生のビエール・トンミー君に、質問に対し質問で返すという卑怯な手に出た。

「……….」

ビエール・トンミー君は何とも答えられず、沈黙するしかなかった。

1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。

「じゃ、取り敢えず、『何会』に入ってね」



「え?」
「『何会』って、何の『会』か分からないけど、何やってもいい『会』なんだ」

ビエール・トンミー君は、戸惑った。

「(どうしたのだ?エヴァ君)」

自分程ではないが、この美少年の同級生は、他の同級生たちとは異なり、極めて論理的であり、その点も自分に近しい奴だと思っていたが、『何会』については、非論理的でもないが決して論理的ではなく、『シュール』といった方がいい論理で迫ってきた。

「じゃ、ビエ君ももう会員だよ」

エヴァンジェリスト君は、そう勝手に決めたが、ビエール・トンミー君は、何故か、敢然とした拒否をすることができず(拒否するもしないも、『何会』が何の『会』であるのか分らなかったのだ)、

「あ….?ああ……」

と曖昧に答えてしまった。

その一言が、その後40年以上に亘るエヴァンジェリスト君との『くしゃれ緑』(いや、『くされ縁』)を結ぶことになってしまうとは、ビエール・トンミー君でなくとも思い到るはずがなかった。


(続く)


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