(夜のセイフク[その2]の続き)
夜1時近いが、背にしているリビング・ルームには明かりがついている。妻が、テレビで『ウインブルドン2018』を見ているのだ。
「一緒に見ない?」
夫が、スポーツ番組を見ないことは知っていたが、妻は、お愛想であろう、一応は誘った。
「あーた、って、本当にスポーツには興味ないのねえ」
『サッカー・ワールドカップ2018』も、一試合を除いて見ていない。サッカーもどこが面白いのか分らない。点も少ししか入らないではないか。
だが、あの試合は、少し面白かった。唯一見た『日本 vs ポーランド』戦だ。
友人のエヴァンジェリスト氏が、
「ワールドカップくらい見ろよ」
と五月蠅く云うので、たまたま『ながら見』をしたのが、『日本 vs ポーランド』戦であったのだ。
「しかし、あれは何だったのだ」
前代未聞の終盤だった。負けているのにボールを回して時間稼ぎ。相手のポーランドも勝っているので何もしない。今まで見たサッカーの試合の中で一番面白い試合であった。
「いや、アイツのお陰、なんかではないぞ」
ビエール・トンミー氏は、本来興味のないサッカーを楽しんでしまったことに羞恥心を覚えていた。
「だが、あの試合が『曲がったことが嫌いな男』よりも面白かったのは事実だ」
見上げる夜空の月にいる(いるように見えた)うさぎの顔が、エヴァンジェリスト氏の顔になった。
(続く)
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