2018年7月13日金曜日

夜のセイフク[その4]





「『月にうさぎがいた』なんて巫山戯たことを……」

夜空に身を晒しながら、ビエール・トンミー氏は、時空を飛んだ。

…………それは、1970年の広島県立広島皆実高校であった。

「ビエ君、入らない?」

1年7ホームの教室で(『クラス』のことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)、昼休みに同級生のエヴァンジェリスト君が声をかけてきた。

「はあ?」

自分程ではないが、かなり頭が良く、顔もそこそこにハンサムなこの同級生とは、色々な面で『レベル』が合うからか、気が合い、既に友人となっていた。

「『ナンカイ』なんだけど」
「『ナンカイ』?」

エヴァンジェリスト氏は、広島生れの広島育ちであったが、広島弁を使わない妙な同級生であった。

「『ナンカイ』に入らない?」

ビエール・トンミー君は、小首を傾げた。



「???」


(続く)



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