(夜のセイフク[その3]の続き)
「『月にうさぎがいた』なんて巫山戯たことを……」
夜空に身を晒しながら、ビエール・トンミー氏は、時空を飛んだ。
…………それは、1970年の広島県立広島皆実高校であった。
「ビエ君、入らない?」
1年7ホームの教室で(『クラス』のことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)、昼休みに同級生のエヴァンジェリスト君が声をかけてきた。
「はあ?」
自分程ではないが、かなり頭が良く、顔もそこそこにハンサムなこの同級生とは、色々な面で『レベル』が合うからか、気が合い、既に友人となっていた。
「『ナンカイ』なんだけど」
「『ナンカイ』?」
エヴァンジェリスト氏は、広島生れの広島育ちであったが、広島弁を使わない妙な同級生であった。
「『ナンカイ』に入らない?」
ビエール・トンミー君は、小首を傾げた。
「???」
(続く)
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