(夜のセイフク[その4]の続き)
「『ナンカイ』ってね…….」
エヴァンジェリスト君が、机の上にノートを広げ、そこに、『何会』と書いた。
「何?『何会』って」
まだウブであったビエール・トンミー君は、素直に疑問を口にした。
「ふふ……」
エヴァンジェリスト君の思う壺であった。
「『何会』って、何の『会』か分らないだろう?」
「ああ、分らない」
他の同級生たちであったら、そこは広島なので、
「『何会』ゆうて、何の『会』か分らんじゃろ?」
「おお、分らんのお」
という広島弁丸出しの会話になるところであっただろうが、エヴァンジェリスト君とビエール・トンミー君の会話は、どこかスマしたような標準語の会話であった。
「何なの?『何会』って?」
ビエール・トンミー君は、広島生れではなかった。福岡県で生れ、その後、山口県宇部市等で小学校生活を送り、中学から広島で生活するようになっていたのだ。だから、どこの土地の言葉にも馴染まず、標準語を使うようになっていた。
「ふふ……『何会』ってね……..」
してやったり、という不敵な笑みを浮かべ、エヴァンジェリスト君は、説明を始めた。
(続く)
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