(夜のセイフク[その14]の続き)
それは、エヴァンジェリスト君のテクニックであったのだろうか?或いは、彼が天性の人ったらしであったからなのであろうか?
「もうしばらくだからね。もう少しだけ待ってね」
と、エヴァンジェリスト君に耳元で囁かれて、ビエール・トンミー君は舞い上がったのだ。エヴァンジェリスト君は、自分にだけ囁いたのだ(少なくとも、ビエール・トンミー君はそう思った)。
「(そうか!ボクは違うんだ。ボクだけは、他の会員連中とは違うんだ!)」
自分は、『何会』の特別会員だろうと、いや、『何会』の共同創始者と云っていいのかもしれない、と思えたのだ。
「(ミージュ君も、楽しみにね)」
教室の片隅で、その日もジロチョー君に何かを見せられているミージュクージ君を見遣って、心の中で呟いた。
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室で(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)、昼休みである。
(続く)
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