(夜のセイフク[その17]の続き)
「(な、なんなんだ、これは?)」
それが、自分が待っていたもの(待たされていたもの)であることは、分ったが、ビエール・トンミー君には、それが『何』であるかは分らなかった。
「これだよ」
と、エヴァンジェリスト君が、ビエール・トンミー君の机の上に置いたものは、ノートのページをちぎったものをホッチキス止めしたものであった。
「(ボクは、これを待っていたのか…..)」
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
エヴァンジェリスト君から、
「もうしばらくだからね。もう少しだけ待ってね」
と勿体をつけられていたものが、ちぎったノートのページをホッチキス止めした見すぼらしい冊子のようなものであったのだ。
「(ボクは、こんなものを待っていたのか…..)」
ビエール・トンミー君は、言葉を失っていたが、
「いいんだよ、見て」
と、エヴァンジェリスト君は屈託がなかった。
無言のまま、ビエール・トンミー君は、その冊子のようなものの表紙を見た。
そこに書かれていた文字は(勿論、手書きである。まだ、パソコンもワープロのある時代ではなかった)、『何会』であった。
(続く)
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