(夜のセイフク[その19]の続き)
その時、『何会』が『何』であるのか、創始者であるエヴァンジェリスト君以外の誰にもまだ分っていなかった。
『何会』は、謎に包まれていた。
だから、自分の机の上に置かれた見すぼらしい冊子のようなもの、そう、ちぎったノートのページをホッチキス止めしたものを見て、
「(『何会』の特別会員は、美少年、または、美少女に限る、とでも書いてあるのだろう)」
とビエール・トンミー君が思ってしまったのも無理はなかった。
『何会』に何がしかの共通項を見出すとすると、『美少年』しかないのだ。エヴァンジェリスト君と自分との共通項だ。
見すぼらしい冊子のようなものは、『何会』の会則を記したもので、そこに特別会員の資格等が記載されていると考えたとしても責めることはできない。
「中を見ていいんだよ」
机の横に立つエヴァンジェリスト君の声に、ビエール・トンミー君は、我に返った。
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
「ああ….」
ビエール・トンミー君は、『何会』と書かれた見すぼらしい冊子のようなものの表紙をめくった。
「え……!」
思わず声を上げた。
(続く)
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