(夜のセイフク[その7]の続き)
「じゃ、ビエ君ももう会員だよ」
と、エヴァンジェリスト君が、美少年の同級生ビエール・トンミー君を、自らが主宰する『何会』の会員としたその2-3日後であった。
「ミージュ君も会員になったよ」
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
「はあ….?」
ビエール・トンミー君は、忘れかけていたが、思い出した。そうだ、自分は、『何会』の会員になったのだ。
いや、会員になったつもりはなかったが、
「じゃ、ビエ君ももう会員だよ」
と、エヴァンジェリスト君に云われた時、
「あ….?ああ……」
と曖昧に答えてしまい、会員とされてしまっていたのである。
『何会』が何の『会』であるのかは、ビエール・トンミー君は知らなかった。主宰者のエヴァンジェリスト君自らが、何の『会』であるのか分らない、というのだから、『何会』の正体なんて、ビエール・トンミー君が知りようもない。
怪しい宗教のような『会』ではなそうであったし、エヴァンジェリスト君は、やや妙はところは感じられたものの(後年、それが大きな間違いで、『やや』妙ではなく、『相当』妙であることを知ることになったが)、人間としての根幹に『誠実さ』を持っていることは感じられていたのだ。
それに、
「じゃ、ビエ君ももう会員だよ」
とは云われたものの、『会』としての活動は何もなかった。なので、『会員』になったことを後悔することもなく、半ば『何会』のことは忘れかけていたところであった。
「ミージュ君も会員になったよ」
と声を掛けられ、
「(ああ、ボクは会員なんだ、『何会』とやらの)」
と思い出し、教室の中、少し離れた席にいるミージュ君を見遣った。
「(彼も、エヴァ君に会員にさせられてしまったのか….)」
しかし、ミージュ君は、特段の警戒感も危機感も持っているようには見えず、眠たげにジロチョー君に何か見せられていた。
(続く)
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