2014年7月31日木曜日

鹿、ザ・ワイルド



「ワイルドだなあ」

ドキッとした。背中越しに聞こえてきたその言葉に、エヴァンジェリスト氏は、ドキッとした。

「アオニーお前、今日、ワイルドだなあ」

「そうですかあ?」

通りすがりに声をかけて来た上司の上司の上司の上司であるコニャニャチワ氏に、アオニーこと、アオニヨシ君が答えた。

「ワイルドだよお」

コニャニャチワ氏は拘る。

「いや、ホント、ワイルドだぜえ」

「ま、いいですけど」

ブフっ!思わず笑って振り返った。会社でアオニヨシ君と背中合せの席に座るエヴァンジェリスト氏が、笑うというか、吹き出した。

「ワイルド...ブフっ!」

コニャニャチワ氏は、エヴァンジェリスト氏が何故吹き出したか分からないまま、その場を離れた。

「ワイルドかあ。いいねえ」

エヴァンジェリスト氏は、満面の笑みでアオニヨシ君に話しかけた。

「あの人は気づいたのか?いや、そうとは知らずに感じたままを云ったんだろう。知らないんだろうなあ、君が...であることを」
「しっ!それは秘密だろ?」
「そうなんですか?」
「みんな、うすうす気づいてるとは思うが」
「気づいてますか?」
「そんなことはアナタ以外の人からは云われませんよ」
「それにしてもウケるよなあ」
「ワイルドがそんなに面白いですか?」
「だって、鹿だぜ。鹿は大体が野生、つまりワイルドだろ」
「ふーん、なるほど」
「元々ワイルドな(野生な)相手に、『今日はワイルドだ』って云うか、普通」
「髪を切ったので、ワイルドに感じただけじゃないっすか」
「この際、改名したらどうだ?」
「改名?ああ、杉アオニヨシですか」
「うっ」
「アナタ、単純ですね。『ワイルド』だから、『スギちゃん』ってね」
「いや、まあ、そのお」
「なんなら、『アミューズオーディションフェス2014』に応募しましょうか?」
「な、な、何故、そのことを知っている?」
「『鹿』部門に応募しましょうか?(参照:『鹿』が応募?!...アミューズオーディションフェス2014』。

アオニヨシ君に畳込まれ、エヴァンジェリスト氏はたじろいだ。

「キー!」

親子程、いや親子以上に歳の差があるエヴァンジェリスト氏をやり込め、勝ち誇るようにアオニヨシ君が鳴き声のようなものを上げた(参照:【続・足底筋膜炎】バラクとジョンウン、そして、エヴァンジェリスト氏)。

...と、エヴァンジェリスト氏の眼が光った。

アオニヨシ君の体のある部分を見つめ、一瞬だが眼を光らせた。そのことにアオニヨシ君は気付かなかった。







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