「おいおい、アイツをなんとかしてくれ!」
エヴァンジェリスト氏が、ビエール・トンミー氏のことで怒鳴り込んで来た。
「君はアイツの友だちなんだろ」
確かに、ビエール・トンミー氏は私の友だちだが、エヴァンジェリスト氏だってビエール・トンミー氏の友だちではないか。自分で何とかすればいいのだ。
「アイツのミーハー振り、妄想には辟易だ」
ビエール・トンミー氏は、確かにミーハーで妄想振りもかなりのものだが、ミーハー帝王、妄想王のエヴァンジェリスト氏に云われたくはないであろう。
しかし、一体、二人の妄想王の間に何が起きたのか…
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「エヴァちゃん、久しぶりやねえ」
全然、久しぶりではないが、妙な言葉遣いで突然、ビエール・トンミー氏がエヴァンジェリスト氏のもとを訪れた。
「頼みがあるたい」
どうやら博多弁っぽい。一体、どうしたと云うのだ。ビエール・トンミー氏は、転勤で一時期、福岡に住んでいたことはあるが、博多弁使いではないはずだ。
「この手紙ば、訳してくれんとね」
一通の横文字の手紙を差し出した。フランス語の手紙であった。
ビエール・トンミー氏はフランス語を知らない。フランス語が全く読めないのに、学生時代、フランス語経済学の成績は「優」であったが、それにはある「細工」があったのだ(いずれその「細工」のことは述べる)。
それにしても、その手紙、ただのフランス語の手紙ではなく、ほのかにいい匂いがした。多分、香水が付けてあるのだ。
「早う訳してくれんとね」
仕方がない。こちらはフランス文学修士だ。訳せいない、とは云えない。
『最愛のビエール様、お慕いしております。フランスに帰っても、あなたのことが忘れられません。貴方と過ごしたアツい夜…』
な、な、なんなんだ、この手紙は!ラブ・レター、いや、エロ・レターではないか!
「ああ、もうよか、よかよか。止めてくれ!」
ビエール・トンミー氏は、顔を真っ赤にして、手紙をエヴァンジェリスト氏から奪い取った。
「金髪のパリジェンヌたい。キリンシティの横浜モアーズ店たい…」
キリンシティの横浜モアーズ店で、ビールサーバーを囲むようにして円くなったカウンターに独り座り、一番搾りスタウトを飲んでいたところ、向い側のカウンターで同じくスタウトを飲んでいた金髪の女性と眼があって…
...と説明を聞いていたが、そこで、ふとエヴァンジェリスト氏は気付いたのだ。
少しシチュエーションは違うが、どこかで同じような場面に遭遇したことがあると。
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そうのだ。エヴァンジェリスト氏は、気付いたのだ。
嘉納伝助である。
嘉納伝助が、村岡花子のもとを訪れて、神戸の博覧会で出会った金髪の踊り子からもらった手紙を翻訳してもらったのだ。
嘉納伝助が村岡花子に翻訳を頼んだ手紙の内容とビエール・トンミー氏がエヴァンジェリスト氏の翻訳を頼んだ手紙の内容がそっくりであったのだ。
遭遇した場所や、アメリカとフランスの違いはあれ、殆ど同じ内容であるのだ。
そんな偶然なんてない。エヴァンジェリスト氏は気付いたのだ。
ビエール・トンミー氏は、顔を真っ赤にして、手紙をエヴァンジェリスト氏から奪い取ったが、それはお芝居なのだ。
自分がモテることを、艶福家であることを友人のエヴァンジェリスト氏に見せつけたかったのだ。
しかし、ビエール・トンミー氏が実際にモテる訳がなく(と、エヴァンジェリスト氏は思う)、嘉納伝助を真似てみたのだ。フランス語のエロ・レターをどこでどうやって準備したかは不明であるが。
「アイツ、嘉納伝助になるつもりなのだ」
エヴァンジェリスト氏は激怒していた。
「ワシを騙しおって!ワシは、『このヘンタイ妄想野郎!』と云って、追い返してやった。もうこんなくだらないことワシに仕掛けてくるな、と云っておいてくれ」
確かにビエール・トンミーは、ヘンタイ妄想野郎であるが、自分(エヴァンジェリスト氏)だって『嘉納伝助になるたい!』と云っていたくせに。(参照:「嘉納伝助になる!」)
ところで、ビエール・トンミー氏が母校のオープンカレッジに通うようになったのも、ヘンタイ妄想野郎だからであろうが、どういうヘンタイ妄想をしたのであろうか?
右欄に2014年8月末まで設置する「ビエール・トンミー氏の優雅な疑惑」に投票(回答)頂きたい。
質問を再掲しておく。(参照:疑惑のカレッジ….【ビエール・トンミー氏の優雅な老後】)
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では、質問です。
ビエール・トンミー氏が、オープンカレッジに行くことにした理由を以下から選べよ。
(1)現役女子学生目当て
[昔とった杵柄でナンパしたい、合コンとやらもしたい]
(2)オープンカレッジに通う美熟女目当て
[お互い家庭を壊さない程度に、ムフフ]
(3)美人の誉れ高い●●●子先生目当て
[出来れば、プライベート・レッスンも]
(4)奥さんに惚れ直してもらう
[今度、奥さんと欧州旅行をした際に、西洋の美術知識を披露して、『アナタ、ス・テ・キ』と云ってもらいたい]
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