2017年3月31日金曜日

【格言】『猫に珍宝』







「おい、コレは何だ?」

ベッドの布団の中でトンが訊いた。

「このフニャフニャしたもの?」

ミーが答えた。

「そうだ、それだ。何やら臭うぞ」
「ふやけたソーセージみたいねえ」

猫たちは、異物に困惑していた。


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「いやあ、久しぶりだ。今年になって初めてだ」

ビエール・トンミー氏は裸になり、ベッドの中で、ある種の解放感に浸り、独り言ちた。

「ここまで来ると、妻に洗濯は頼めない」

今日、パジャマを洗濯したのだ。昨年末(2016年12月頃)に妻に洗濯してもらってっきりになっていた。寒くて、冬場はパジャマを身から離せない。

3ヶ月も洗濯していないと、さすがに臭う。この臭いを妻に嗅がせてはならなかった。

夫人は今でも夫のことを素敵な先輩と思っている。10も歳下の夫人は、同じ会社の後輩美人女性社員で、会社のマドンナ的存在であった。

そのマドンナが憧れたのが、ビエール・トンミー氏であったのだ。

マドンナは、男が「変態」であることを知らず、その容姿に騙されたのである。そして30年も経った今もまだ、騙され続けているのだ。

ビエール・トンミー氏は、妻との間だけは、イトナミの際も極めてノーマルに振舞っており、夫人は夫が「変態」であるなんて、夢想だにしていない。

「ふふっ」

くすぐったかった。布団の中で、何かぬるっとしたものに珍宝を触られた。

「トンか、トンだな」

そうだ。トンが鼻で珍宝を突いたのだ。トンはその時、思った。

「おい、コレは何だ?」

「ふふふっ」

またまたくすぐったかった。布団の中で、何か少し硬いものに珍宝を引っ掻かれた。

「ミーか、ミーだな」

そうだ。ミーが前足で珍宝を引っ掻いたのだ。ミーはその時、思った。

「何、このフニャフニャしたもの?」

ビエール・トンミー氏は、パジャマを洗濯し、乾くまで裸で猫2匹とベッドに入り、本を読んでいたのであった。「変態の法」という本である。




「そうか、トンもミーも知らないのだな。『原宿の凶器』と云われたものなのだがな」

ビエール・トンミー氏の会社は以前、原宿にあった。氏のソレは、『原宿の凶器』と呼ばれる程の威力を女性たちに対して有していたのである。

しかし、『原宿の凶器』も今はもう○○の小器』となり、普段は、パジャマの下のパンツの中に大人しくしまわれている。

「しかーし!●●●子先生となら….」

ビエール・トンミー氏がそう思った瞬間、ベッドの布団の中で2匹の猫が噦いた。

「おえっ」


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「おえっ」

トンとミーは、思わず噦いた。

「な、な、なんだ!」

ビエール・トンミー氏が『しかーし!●●●子先生となら….』と思った瞬間、フニャフニャしていたものが急に怒張し、異臭を布団の中に放ったのだ。

「脱出!」

猫2匹は、布団から飛び出し、ベッドからジャンプしたのであった。







2017年3月30日木曜日

【昇進試験】『おやすみ、チュッ、チュッ』




「ふーっ」

ひどい寝汗だった。

「なんで、あんな夢を見たのだ….」

ビエール・トンミー氏は、ベッドに上半身を起こしたまま、パジャマの袖で汗をぬぐった。


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………..あー嫌な夢を見た。

オレの嫌いな上司(いつもコイツが出てくる)が実施したオレに対する昇進試験の夢だった。

試験はグループで行うケーススタディだった。

ある課題を解決するグループのメンバーに対して、オレは上司としてどんなアドバイスを与えれば良いかというものだ。

ケーススタディはものすごく具体的で、ある交通不便な海沿いの町の物流を改善する為に試験官である上司と受験者であるオレとオレの部下たちの7-8人がその町を訪れる、というものであった。

グループの部下やオレが町の主だった人に聞き取り取りを行なうことから試験は始った。

オレは、天ぷら屋を兼ねたその町唯一の雑貨屋にインタビューをした(なんで天ぷら屋なのかは不明だ)。

試験官である上司は、優秀な部下には優しいが、そうでない部下には厳しい人だった。

いや、オレは優秀であったが、その上司は優秀な部下の中でオレにだけは厳しかった

今回の試験でも、まるで座布団のような大きさと厚さの洋書をオレに示して「もう読んだろう」と云ってきたのだ。その洋書に今回の試験の前提が書かれていたのである。

しかし、それは前の晩に入っていたその海沿いの町の寂れた旅館で、夕食時、ビールを浴びるように飲まされた後、夜11時に渡されたのだ。

勿論、洋書に目を通せる訳がなかった。

前提も分らずにオレは試験に臨むことになったのだ。

何をヒアリングしていいのか、よく分らず、オレは何かを雑貨屋に(いや、天ぷら屋、というべきか)訊いていた。

しどろもどろになり、天ぷら屋に「もういいかいのおう、兄ちゃん」と云われてしまった。




上司は北叟笑んでいた。部下たちは、呆れていたのか、可哀想に思ってか、オレから視線をそらしていた。

オレは、上司にはめられたのだ。

オレには分っていた。何故、優秀な部下の中でオレにだけは厳しかったのか。

上司はオレに嫉妬していたのだ。

オレの容姿に嫉妬していたのだ。自分からは云いたくはないが、オレはハンサムであった(今なら、イケメンというのだろう)。

ハンサムであったから、10も歳下の後輩美人女性社員と結婚できたのだ。今のオレの妻だ。妻は、会社のマドンナで、問題の上司も目をつけていたことは知っていた。妻帯者で、小学生の子供が二人もいるというのに。

自分が狙っていた女をモノにしたオレのことをよくは思っていなかったのだ。

オレは、この昇進試験で、謂れのない意趣返しを受けていたのだ。

はめられてしまった…..しかし、試験を投げ出すわけにはいかない。妻の為にも、昇進して給料を上げないといけないのだ。

しかし、前提も分らずに受験することは、辛い、というか無謀だ

天ぷら屋を出て(もうこの際、雑貨屋でも天ぷら屋でもいい)、次に病院に行き、そこで、医師と看護師たちにインタビューする場面で目が覚めた。

夢から醒めてほっとした…….

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「なんで、隠滅生活の変態がこんな夢を見るのだろう….」

ベッドに上半身を起こしたまま、ビエール・トンミー氏は、枕元のiPhoneを手に取った。

「そうだ、アイツのせいだ。アイツがあんな気持ち悪いメッセージを送ってきたからだ」

ビエール・トンミー氏のiPhoneの画面には、友人のエヴァンジェリスト氏からのメッセージが表示されていた。

「ビエちゃん、お休みなさい、チュッ、チュッ」

解説するまでもない。ハリウッド俳優のゲス不倫をネタにした巫山戯たメッセージであった。







2017年3月29日水曜日

【大統領令】『パジャマで外出』





「ビエール、とんでもないニュースだ。稲国のハナフダ大統領が、信じ難い命令を出したのだ
「アイツか、『Alternative Hentai』なんぞという訳の分からんことを云う奴だな
「稲国の特派員からの情報だ」
「地球温暖化対策の見直しでもしたのか?」
「それはトランプだ。ハナフダの奴ときたら、『パジャマで外出』大統領令を出したというのだ





「なに、なに。『パジャマで外出』大統領令とは聞き捨てならぬぞ、エヴァよ」
「そうだ、とんでもない命令だ
「パジャマで外出してもいいではないか!パジャマで外出は、素晴らしいことなのだ」
「はあ、君は勘違いをしている」
「へっ?」
「ハナフダは、『外出時は必ずパジャマを着用すること』を義務とする大統領令を出したのだ」
「おおおおお!な、な、なんと!パラダイス!




2017年3月27日月曜日

ボクが吹くのは…….【夫婦の会話】







「ねええ、アータ。アータってサックス吹いてたことあるの?」

唐突な妻の質問に、ビエール・トンミー氏は狼狽えざるを得なかった。

「な、な、なんだ。いきなり」
「訊かれたのよ、さんの奥様に」
「マ、マ,●さん?」
「あーら、アータ、知らなかったかしら。紅茶教室でよくご一緒になる方よ」
「あ、そ」
西洋美術史にも詳しい方よ」
「せ、せ、西洋…」
「アータ,どうしたの、そんなにつっかえちゃって。そう云えば、アータも西洋美術史が好きなのよね」
「ま、まーな」
「マダム・●って綺麗な方よ」
「そうなのか!?」

ビエール・トンミー氏は、そう訊かざるを得なかった。

「そりゃ、もう、女から見ても美しい方よ。殿方なら夢中になるわね」





「そんなに綺麗なのか!?」
「あーら、アータ、お会いしたいの?マダム・に」
「いや、君よりも綺麗な女性っているはずがない」
「ま、ま、ま、まあああ。照れるじゃないの!」
「ボクは生まれてこのかた、嘘をついたことはない」
「ん、もう、アータったら」
ん、オ・マ・エ」
「あ、そう、そう。そのマダム・がね、仰るのよ」
「ん?」
『トンミ-さんのご主人ってサックスをお吹きになるの?』って」
「何故だ?」
「最近、ネットで、トンミーっていう老人が若い頃、サックスを吹いていたことがある、ってBlogか何か見たような気がするんですって」
「そんなはずがない!...いや、それはボクではない。ボクはサックスなんて吹いたことはない!」
「そうよねえ。アタシもアータからそんなこと聞いたことないもの」
「そうだ、そうだ」
「でも、ネットで調べてみようかしら」
「えっ!....そんな必要はない!」
「どうしたの?ムキになって」
「いや、そんなどうでもいいことするよりも、ボクの横においで
「きゃっ!」
「サックスではなく、君を吹いてやるよ」
「………んんん、あはっ……」







2017年3月26日日曜日

『沈黙』を、『遠藤周作』を語る【エヴァンジェリスト氏、怒りの全文公開】




エヴァンジェリスト氏から怒りの投稿があった。

「不満である。大いに不満である。

意味不明な(日本語にもなっていない)メールのやり取りであった。こんな世の中でいいのであろうか…….(こんな人たちに『日本』を語ってもらいたくない。まあ、この老人たちは『日本』を語ってはいないのだが)

とは何事だ!『プロの旅人』氏はなーんにも分っちゃいない」

どうやら、このBlogの『全文公開【『水面下』のメール】』に対してご不満であるらしい。

「私とビエールとのやり取りを、どこかの国のご婦人お二人のものと同列に扱って欲しくない。私たちの間には、凡人には計り知れぬ深淵があるのだ」

二人は、ただの助平爺と変態爺としか思えないが……

「仕方があるまい。分らぬのなら、公開するしかないであろう。Blog『プロの旅人』の『「あなたは『教祖』なのか?」【週刊聞醜・緊急質問状】』で明かされたビエールからの問いに対する回答だ」

そう、スコセッシ監督の映画『沈黙』を見て大いく心を動かされたビエール・トンミー氏は、『沈黙』を見てよく分らなかった点について、『フランス文學界の最高峰のOK牧場大学大学院の修士にて遠藤周作の権威はどう考えますか』と呈した質問への回答であった。





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(1)キチジロウは棄教を続けながら何故ロドリゴに付きまとって懺悔を続けるのか。


それは、キチジロウが、遠藤周作、その人自身であるからです。

遠藤周作にとって、キリスト教は自身が選んだものではなく、彼は、幾度もそれを棄てようとしました。しかし、棄て切ることができなかったのです。

キチジロウは、そんな遠藤周作自身を投影した存在であるのです。

ご質問への回答になっていないように思われうかもしれませんが、それが私の回答なのです。



(2)ロドリゴが信者のために棄教したのはカトリックの考えでは正しいのか。


カトリックの教えとは何かに依るでしょう。

雑な言い方をすると、西欧的なカトリックでは、正しくはないでしょう。

では、遠藤周作的には、正しいのか、というと(遠藤周作は、ロドリゴが信者のために棄教したことを正しいと考えているのか、というと)、そうではないしょう。

むしろ、正しくはないことが(「正しい」とは何かにも依りますが)、大事なのです。

ロドリゴが棄教したのは、本当に、信者の為だったのか、信者の為にだけであったのかも問題となります。

ロドリゴも弱者であったのです。ロドリゴもキチジロウも同じく弱者なのです。人間とは弱いものなのです。そんことを遠藤周作は言いたかったのではないかと思っています。



(3)ロドリゴが踏み絵を踏む時、キリストの「踏むがいい。私は踏まれるために生まれて来た」という言葉を聞くけれど、これでは神に従ったので棄教と言えないのではないか。


問題は、それが棄教であるのかないのか、ではないのです

仮にそれが(踏み絵を踏むことが)、踏み絵のその人が「いいよ」と言ったものであっても、踏むことは辛いのです。

自分が愛する人を踏むことは(遠藤周作的には.....愛する母を裏切ることは)、とてもとても辛いことなのです。

しかし、「人」はそれを「踏む」のです。愛する人を裏切ってしまうこともあるのが、人間なのです。

キリスト教的に言えば、それは「原罪」とも言えるでしょう。

そこで、繰り返しになりますが、問題は、それが棄教であるのかないのか、ではないのです。

「踏む」ことは辛いのです。しかし、「神」(母)は言うのです。「踏むことはお前も辛いであろう。そのことは私は分かっている」と。

これは、あるフランス文學界の最高峰のOK牧場大学大学院の修士の論文にも通じるところです。フランソワ・モーリアック論を「見る」ということを軸に書いたあの論文です。

「踏む」人間が、自身のその行為の何たるかを知っている、ということ、そう、それは、貴方も既にお分かりかと思いますが、「己を見る」ということなのです。



(4)ロドリゴはその時心の中で本当に棄教したのか。


ロドリゴが、その時心の中で本当に棄教したのか、というと、彼は、その時、「棄教した」というか、「神を裏切った」という認識を持ったと思います(「己を見た」のです)

そして、そのことがむしろ重要なのです。

神から最も離れた人間が最も神に救われる、というのが、キリストの教えです。



(5)映画ではロドリゴは棄教した生活をしていたが最後の火葬のシーンで十字架を握っていて本当は棄教していない事を暗示していた。これは説明的過ぎないか。原作もそうなのか。


原作のそのシーンをもう覚えていませんが、十字架を握っていたことは、棄教していない事を暗示している、というよりも、「神」というよりも「愛する人」を棄てようとしても棄てきれないことを意味しているのだろうと思います。

遠藤周作が、母を(母から与えられたキリスト教を)棄てきれなかったように。



(6)本来多神教でかつ仏教徒の日本人がカトリックの絶対的な神と個人が向き合う考えを何故受け入れたのか。踏み絵を頑なに拒んで殉教するのは欧米の映画では自然に受け入れられるが日本の農民だと違和感を感じる。


遠藤周作的かもしれませんが、日本人は(と、日本人をひとくくりで語ることは本当はできませんが)、カトリック(キリスト教)を「母なる神」として受け容れた要素があるのだろうと思います。

そこで、「マリア」の存在が大きいのです。映画で、隠れキリシタンの生活の中に「マリア」を描いた部分(マリア像関係)がありませんでしたか?

日本の農民が、殉教を選んだとしたら、それは現世があまりに苦しく、あの世に幸福を見出せると信じたからであろうと思います。

殉教は、彼らには苦痛ではなく、大いなる喜びであったのでしょう。総ての農民がそうであったということではないと思いますが。



(7)隠れキリシタンは本当のカトリック教徒だったのか。天国に行くのと極楽に行くのはどう違うと考えていたのか。フェレイラは日本人が敬っているのは「大日様」だど言っていた。


本当のカトリック教徒って、何でしょう?

ブラジルのポルトガル語は、ポルトガル人からするとおかしいものだと聞きましたが、西欧のカトリック関係者からすると、隠れキリシタンの信仰は珍妙なものでしょう。

実際、彼ら(隠れキリシタン)のオラショは、言葉の意味としても「意味をなさない」ものになっています。

天国と極楽の違いは余りなかったのではないかと思います。

遠藤周作的カトリックは、浄土真宗的と言われることもあります。

問題は、隠れキリシタンが本当のカトリックであったかどうかではないだろうと思います。彼らは、それを棄て切ることができなかったのです。その子孫たちは、先祖から伝えられた教えを捨てられなかったのです。

遠藤周作は、隠れキリシタンではありませんでしたが、彼の描いたキリスト像は、西欧のカトリック関係者には受け容れられなかったこともあり、ノーベル文学賞を受賞できなかった、とも言われています。

しかし、総ての西欧人が遠藤周作を否定している訳ではないでしょう。その証拠が多分、この映画なのです。

スコセッシの思想、というか、思いといいうか、感性は、遠藤周作にかなり近いものなのだと思います。

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分った、分った。確かに、ビエール・トンミー氏とエヴァンジェリスト氏は、ただの助平爺と変態爺ではないのかもしれない。

しかし、このやりとりはつまらない。

二人には、やはりただの助平爺と変態爺であって欲しい。




2017年3月25日土曜日

全文公開【『水面下』のメール】





「ボクは、サックス奏者であった記憶がなく、サックスを吹いていたなら教えてくれるかな?

『水面下』でビエール・トンミー氏からメールが来た。

「余りに酷い!その情報は誰からなのだ?全国の女性の方々から証言のメールがどっさり届けられるのだ。励まされるんだ」

エヴァンジェリスト氏は、興奮気味に返信した。

「ボクのハンサム写真が公開されたようなので、確認だ」
「酷すぎる!」
「本当に記憶が水没したようで、過去の写真は蔵にしまっているはずなのですなまい」
「昨晩から、身を隠している。君の関係者から(『忍者』だったかな?)、身を隠すように云われていたからな」
「今はじっと我慢の時だぞ。ボクのハンサム写真はまだまだあるのかもしれないが、お互いに頑張ろう」
「何をだい?誰も信じられない…..助けてくれ!君のハンサム写真の公開の認可をくれたまえ
ボクも女性たちに追いかけれて、ビックリしている。神は総てをご覧になっているのだ」
「ピンチはチャンスでもあるんだ。ビエールも協力してくれ。神に感謝する」
「祈るよ」
「君はボクの唯一人の友人と思っていたのに、君のハンサム写真を偽物呼ばわりするなんて、事実を認めないなら、更にもう1枚公開する!



「ボクもどうしていいのか分らない。ハンサム写真を偽物呼ばわりしている訳ではない。神はどこに導こうとしているのか?とにかく祈る。自分の保身の為ではない。ボクがハンサムであったことは事実だからな

意味不明な(日本語にもなっていない)メールのやり取りであった。こんな世の中でいいのであろうか…….(こんな人たちに『日本』を語ってもらいたくない。まあ、この老人たちは『日本』を語ってはいないのだが)









2017年3月24日金曜日

サックスで○ックス【記憶は水没】







「ボクってこんなにハンサムだったけ?」

ビエール・トンミー氏は、訝った。それは、エヴァンジェリスト氏が公開した秘蔵写真であった。

「ボクってこんなにハンサムだったけ?ふふ」

訝りながらも、ジャニーズ系のように胸をはだけさせたイケメンな自分に、頬から笑みがこぼれ続けた。

「ビエール様、それだけではないのです」

側に控えていた『忍者』が、忘我の主人に声をかけた。

「ふむ?」
「ビエール様、あなたのハンサムぶりに私、心底驚きました」
「ま、分からぬでもないが….」
「エヴァンジェリスト氏は、こんな写真も公開されたのです」
「おお!」

ビエール・トンミー氏は、計らずも感嘆の声を上げた。





それは、こんな写真を見せられたのだ、仕方がない。

ビエール様、あなたはお若い頃からほんにハンサムでいらした」
「いや、ま、まあな」

と云いながらも、ビエール・トンミー氏は訝った。

「しかし、これは本当にビエール様なのでしょうか?」

『忍者』は、主人の心を見透かしたのように疑問を呈した。

「…..」
これは本当にビエール様なのか、最初、私はそう思ったのです」
「…..」
「そんな私の心を読んだか、エヴァンジェリスト氏はこんな写真も公開されたのです」
「おお!」

ビエール・トンミー氏は、計らずも再び、感嘆の声を上げた。





それは、確かに自分であったのだ。

「ええ、そうです。そうなんです。確かに、ご主人様、ビエール様、あなたです」
「…....ああ、そうだとも」

訝りながらも、顔黒イケメンな自分に、またもや頬から笑みがこぼれ続けた。

「ビエール様は、サックスをお吹きだったのですね。存じ上げませんでした」

おお、サックスか…….友が、そう、エヴァンジェリスト氏がサックス奏者であったことは覚えているが、自分もサックスを吹いていたのであったか?

『忍者』、再び忘我となった主人に声をかけた。

「ビエール様、あなたはサックスで女性たちをおとして、○ックスしまくっていたのではないですか?」
「ええ、ええ?」
「隠しても無駄です。エヴァンジェリスト氏がそう証言していました」

まあ、いいか。「サックスで○ックス」なんて記憶はないが、記憶なんて、どこかで水没させてしまったのだろう………………ビエール・トンミー氏は、そう思うことにした。






2017年3月22日水曜日

乳首に悶絶【サーバントの証言】








「ねええ、あの方って、とても素敵でなくって」

いやいや、その言葉は、確かにボクたちの高校の校庭で女子生徒たちが囁いていたのだ。君を見てな。

「ねええ、あの方って、とても素敵でなくって」

照れる必要はないよ、ビエール。君は女子生徒たちの憧れの的だったんだから

「ねええ、あの方って、とても素敵でなくって」

正確には、ちゃんとそう聞こえた訳ではないが、君が彼女たちの口の動きからそう云っているに違いないことは十分に察することはできた、と云うのであれば、そうなのであろう(ふん)。

「ねええ、あの方って、とても素敵でなくって」

ちっ。若かりしビエール・トンミー氏がハンサムであったことを認めてやらざるを得ない状態に追い詰められたエヴァンジェリスト氏は舌打ちした。

オレは、奴のサーバントか!

ハンサムであったことを認めてやらないと、『忍者』を使って、自身の今の醜い姿を(ファット・ペンギンな様を)これ以上、Blog『プロの旅人』を使って公表されては叶わないのだ。

仕方があるまい、とエヴァンジェリスト氏は秘蔵写真を公開することにした。

これだ!これが、若かりし日のビエール・トンミー氏だ。





ジャニーズ系のように胸をはだけさせ、女性たちを虜にしたいたのだ。僅かにのぞく乳首に女性たちは、悶絶したのだ。

いいかい、ビエール?これで満足かい?自分でも驚くくらいハンサムだろ?

ボクってこんなにハンサムだったけ、と思うだろう?

屈辱のサーバントであるはずの男は、何故か満悦の表情を浮かべた。








2017年3月21日火曜日

ファット・ペンギン【ハンサムのなれの果て】





「当時、エヴァンジェリストさんを見て、『なんとハンサムな人なんだろう』と思ったんですよ」

くどい!.....あああ、くどい!くどい!

「当時、エヴァンジェリストさんを見て、『なんとハンサムな人なんだろう』と思ったんですよ」

『忍者』はこの言葉を繰り返したのだ。

「当時、エヴァンジェリストさんを見て、『なんとハンサムな人なんだろう』と思ったんですよ」

法要で住職が、若き日のエヴァンジェリスト氏について語った言葉を『忍者』は繰り返したのだ。

「当時、エヴァンジェリストさんを見て、『なんとハンサムな人なんだろう』と思ったんですよ」

ちっ。デリカシーのない部下(『忍者』)に、ビエール・トンミー氏は舌打ちした。

エヴァの奴が、若い頃にハンサムであったことは、自分が一番よく知っている。高校一年からの友達だからだ。

しかし、自慢するわけではないが、自分も相当にハンサムであったのだ。いや、エヴァよりもずっとハンサムであったのだ。なのに、『忍者』の奴ったら…..

高校生の頃、校庭を歩く女子生徒たちは自分を見て、「ねええ、あの方って、とても素敵でなくって」と云っていたのだ。

「ねええ、あの方って、とても素敵でなくって」とちゃんと聞こえた訳ではないが、彼女たちの口の動きからそう云っているに違いないことは十分に察することはできたのだ。



そんな想いに口の端を歪め、『忍者』が側に控えたままいたことも忘れていたビエール・トンミー氏に、『忍者』が声をかけた。

「しかし、あの方はもう見る影もありませぬ」

ううん?

「つい先日のことです、東京は府中市の大國魂神社にこんなペンギンがおりました」



云うまでもない。それは、変り果てたエヴァンジェリスト氏の今の姿であった。

「これは、ファースト・ペンギンならぬファット・ペンギンです」

そうか、娘の結婚式だったんだな。それにしても、『忍者』の奴、ファースト・ペンギンならぬファット・ペンギンとは、上手いことを言いおる。

自らの老醜を忘れ、男は満悦の表情を浮かべた。