「(アイツ、『自然に生きてるって わかるなんて 何て不自然なんだろう』って云ってきたが、アイツが自分で考えた言葉なんだろうか?まあ、アイツ的な発想でなくはないんだが)」
と、ビエール・トンミー氏は、iMessageを交わすiPhone 14 Proの画面の向こうにいる友人エヴァンジェリスト氏のオゲレツだらけの文章に、ごくごく稀にだが、『真』を描くレトリックがなくはないことを思った。
しかし、その思いは直ぐに、次に来たエヴァンジェリスト氏からのiMessageでかき消された。
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「いや、ワシの言葉じゃやないんよ。アンタの高校の先輩が、そう歌うとったらしいんよ。『吉田拓郎』よおね」
「は?」
「『広島皆実高校』の先輩じゃろ、『吉田拓郎』は?」
「知らん、知らん!『カイジツ高校』なんて、ワテは知らへん!」
「『広島皆実高校』の文化祭に帰ってきて、体育館でコンサートやってくれたじゃろうが」
「知らん、知らん!いや、『吉田拓郎』は知らんでもないが、『カイジツ高校』なんて、ワテは知らへん!」
「『皆実(ミナミ)高校』をカイジツ高校』いうんは、不自然でえ。その点、『未接触部族』の人たちは、自然に生きとることについて、それをそうとは思わん程に、『自然』に生きとるんじゃあ思うんよ」
「まあ、その考え方は、認めたる」
「でのお、それと比べたら、『アーミッシュ』は甘いんじゃあないかと思う訳なんよ。まあ、ワシは、『アーミッシュ』のことはよう知らんけど、自然に生きとる自覚があるんじゃないんかねえ?そだとしたら、そりゃあ、『自然』じゃあないでえ」
「うーむ、そうれはそうかもしれへんけど」
「でも、『アーミッシュ』も『アーミッシュ』なりに、『快楽』を求めず、禁欲的な生活をしとるいうことなんじゃね」
「おお、ようよう、話がそこに戻ってきたか。せや、そん通りじゃ」
「でも、アンタあ、『アーミッシュ』にはなれんのお」
「は?『アーミッシュ』になるつもりなんぞ、あらへんが、なんでなれへん云うねん?ワテは、アンタと違うて、オゲレツな『快楽』は求めとらんで」
「へええ、ホンマにそうなんかねえ」
「うっ!」
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「(しまった!なんで、iMessageに『うっ!』なんて、呻き声を書いてしまったんだ」
と、ビエール・トンミー氏は、自らの鼓動が速くなっていることに気付かない程に動揺した。
ビエール・トンミー氏は、知っていたのだ。買ったもののまだ読んではない本『アーミッシュの老いと終焉』に、キスをし、頬ずりをし、匂いを嗅いだことを。本来は、『快楽』を提供するものではない本に『快楽』を求めたことを。
(続く)
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