「(この本は、まだ読んではないが、『アーミッシュ』本らしい表紙だ)」
ビエール・トンミー氏は、買っただけでまだ読んではいない(キスしたり、頬ずりしたり、匂いを嗅いだリハしたが)本『アーミッシュの老いと終焉』の虚飾なく、ただ帽子が壁にかけられた様を映した表紙を気に入っていた。
と、その本を見る目の端で、iPhone 14 Proの画面が軽く、自動でスクロールした。
友人のエヴァンジェリスト氏からのIMessegeである。
====================================
「『イゾラド』は、馬車も使うとらんかったあ思うがのお」
「はああん?『イゾラド』?なんや、それ?」
「アマゾンの源流の辺りに住む、所謂『先住民族』よおね。『イゾラド』は、ポルトガル語だと、『Isolado』だ。フランス語が堪能な、いや、フランス語経済学が堪能な、『SNCF』大家のアンタならピン!と来たあ思うが、フランス語の『isolé』と同じじゃ」
「ああ、それかあ。ああ、分るで。分るけど、アンタに説明させたる。どういう意味か云うてみいな」
「英語だと、『isolated』で、つまり、『孤立した』ちゅうような意味じゃ。語源的には、『島』じゃのお。フランス語で、『島』は『île』じゃあいうんは知っとるじゃろ?」
「あ、おお、おお、知っとるで」
「それに、今は『île』じゃったが、昔は『isle』じゃったことも知っとるよのお?」
「当然やで」
「『isolé』は、その『isle』から来た言葉で、つまり、『島』んように『孤立した』いうような意味じゃのお」
「おお、その通りじゃ。ようでけたで。『ロビンソン・クルーソー』な感じじゃ。で、その『イゾラド』が、どねえしたんや?」
「『イゾラド』はのお、原始的な生活しとるんよ。まあ、この『原始的』いう云い方は、こっちの思い上がりな云い方じゃろうし、『先住民』いう云い方も、『イゾラド』からしたら、後から勝手に来た連中が勝手にそう呼んどるだけじゃあ、思うじゃろう。ブラジル政府は、『イゾラド』を保護しようとしとるらしいんじゃが、『イゾラド』の他にもブラジルには、先住民族がいくつかあるらしいんじゃが、先住民族側は、そもそも自分たちのことを『ブラジル人』とは思うとらんじゃろう」
「アンタ、大丈夫か?なんか、真面目になってきとるやないか」
====================================
とは云ったが、ビエール・トンミー氏は、友人のエヴァンジェリスト氏を心配したのではなかった。
「(アイツ、今度は何を企んでいるんだ?)」
そうだ。エヴァンジェリスト氏が、ただただ真面目な話をする訳はないのだ。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿