2023年1月13日金曜日

チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その1)

 


「チッ!」


リビングルームのソファに腰を沈めたビエール・トンミー氏が、顔を歪めながら、舌打ちした。


「あ~ら、アータ、どうしたの?」


台所で洗い物を片付けていたマダム・トンミーが、夫に声を掛けた。


「いや、iPhoneの操作をちょっと間違っただけだよ」

「あ~ら、アータでもそんなミスをするのね」

「まあね。でも、iPhoneは、シェイクするか、3本指でタップすれば、操作の取り消しができるから問題ないんだ」

「へええ、そうなの。ア~タって、ホント、いろんなこと、よく知ってるのね。『ハーバード』の学生よりアタマいいわ。まあ、アタって、『ハンカチ大学』の商学部出てるんだから、元々、『ハーバード』に負けるものじゃないけど」


と、マダム・トンミーは、手を休めていた洗い物の片付けを再開した。


「(そうだ。問題は、その『ハーバード』だったんだ。あの野郎!)」


そう口中で呟きながら、ビエール・トンミー氏は、憎々しげな表情を隠さず、掌に持つiPhone14Pro の画面に目を遣った。


画面には、友人のエヴァンジェリスト氏の戯けた顔の下に、今交わしたばかりのiMessageの文面があった。


「(アイツにあんな質問をすると、こうなることは判っていたのに)」



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「問題や。『チョコとガムの値段は合わせて110円です。チョコはガムより100円高い。では、ガムはいくらですか』。読んだら即答してェや」

「ガムは何個あるん?」

「1個や」

「合せて110円とした時のガムと、『ガムはいくらですか』いう質問の『ガム』は同じ『ガム』なん?」

「同じや」

「チョコは何個あるん?」

「1個や」

「ガムは、一個、が回答じゃ」

「はあ?値段を聞いとるんやで」

「『いくら?』いう質問じゃったけえ、個数かあ思うたんよ」

「即答、即答!」

「110円した時に買った店と値段を比較した時の店は同じなん?」

「同じや」

「この計算、難し過ぎて分らん」

「アンタ10円と思ったやろ」

「いや、分らんかった」

「答えは5円や。ガムが10円だとしたらチョコは110円となり、合計は120円になってしまう。正解は5円。


   ガム    5円 

   チョコ 105円

   合計  110円


と、こういうことじゃ」

「ああ、ワシ、個数聞いたじゃろ。センスええと思わん?」

「思わん。変人なだけや」

「でも、これ、いつの時代の問題なん?」

「さっき本で読んだんや。ハーバードやMITの学生でも、半分くらいは10円と答えるんやで」


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(続く)





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