「(あのままだったら、家内と結ばれることもなかっただろう)」
と、ビエール・トンミー氏は、同じ会社のマーケティング部にいた妻との出会いを思い出した。システブ開発部の自分が、マーケティング部用のシステムを開発し、そのシステムの操作方法を教えたのが、妻であったのだ。妻のすぐ横、密着するように並んで座って、操作を教えたのだ。
「(あの時、まだアル中だったら、猛烈に酒臭くて、女房はボクのことを軽蔑していただろう)」
と、また、iPhone 14 Proの画面が軽く、自動でスクロールした。友人のエヴァンジェリスト氏からのIMessegeである。
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「ワシ、大学生時代、同級生にアル中がおって、その男は、食事する時、味噌汁のお椀持つ手が震えとったし、親からの仕送りがあったら、CDで(当時は、ATMじゃのうてCDじゃったろ?)お金をおろして、直ぐに酒屋に行くんよ。で、『角打ち』いうんか?酒屋でそのまま、直ぐに酒を飲んどったけえ」
「ああ、その同級生も立派なアル中や」
「燕尾服は着とらんかったがのお。あの男は、今でもアル中なんじゃろうか?」
「ワテはやなあ、何度も禁酒しょうとしたんやが、挫折の連続やった」
「タバコん時みたいに、『エイヤッ、もー禁酒したる』と絶大なる意志の力でもっても禁酒できんかったん?」
「ああ、アカンかったんや。依存症いうもんは、怖いもんや。抜け出そうと思ても、なかなか抜け出せへんのや。まあ、アンタかて、普段は、戯けたことばっかし云うとるが、現役のサラリーマン時代、立派な『仕事依存症』やったんやさかい、分るやろ」
「ああ、ほうじゃのお。じゃけど、現役のサラリーマン時代、ワシ、スーツは着とったが、燕尾服は着とらんかったけえ、あんまり立派な『仕事依存症』じゃなかったんかもしれん」
「やけどなあ、ワテはなんとか禁酒に成功したんや。禁酒でけたんは、『イトーヨーカドー』の安いワインのお陰や」
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「(あの頃は、恥ずかしかった)」
と、ビエール・トンミー氏は、『イトーヨーカドー』で安いワインを買っている自分を思い出した。
「(それまでは、高級ワインしか買ったことがなかったんだ。なのに、あんな安いワインを買うなんて、周りの誰もそんなこと見てもいないだろうし、気にもしていないだろうとは思ってはいたが、自分を誤魔化すことはできなかったんだ)」
(続く)
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