2023年1月16日月曜日

チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その4)

 


「(あの娘が触った本だ)」


ビエール・トンミー氏は、前日に購入した本『アーミッシュの老いと終焉』を、鼻に近付け嗅いだ後、今度は、表紙の是拍子に近い部分に、そっと自らの唇を付けた。


「(この辺に触ったはずだ)」


そして、続けて、その本に頬ずりをした。


「(あの娘は、『まあ、こんな高尚そうな本をお読みになるなんて、大学教授かしら?それとも評論家?』という眼でこっちを見てきたんだ。ふふ)」


と、軽く微笑んでから、本を裏返し、背表紙に眼を遣った。


「ふん、確認するまでもないことだ」


と、小さくだが、声に出して呟いた。


そうして、友人のエヴァンジェリスト氏に返信のiMessageを送った。



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「そうだ。ワテは、昨日も本を買った時に、ちゃんと消費税を払うたんや」

「おい、なんか、返信に間があったのお。昨日買ったその『エロ本』を見て、興奮でもしとったんか?『エロ本』にキスとか頬ずりとかしとったんじゃないんかいねえ?」

「な、な、何、云うねんな!アンタ、今更やが、アホちゃうか」

「おお、狼狽しとるのお。図星じゃったんじゃね」

「ちゃう、ちゃう。今時、誰が、『エロ本』買うんや!」

「ああ、確かにのお。アンタ、学生の頃は、夜中、下宿抜け出して、『ビニ本』の自動販売機で『熟女』モンなんかを買うて、部屋に持ち帰って、蠢いとったんじゃろうけど」

「アホ抜かすなて。ワテ、学生の頃からオゲレツやったアンタとはちゃうで」

「ああ、そうじゃったのお。アンタあ、昔から『若い娘』好きじゃってけえ、『熟女』モンなんかを買わん買ったじゃろう。『女子高生』モンか?」

「アホらし。『熟女』モンも『女子高生』モンも『ビニ本』か『エロ本』かしらんが、買うたことないわ」

「ほうかあ。まあ、そうよのお、今時は、『エロ本』じゃのうて、ネットでなんでも見れるけえ、アンタ、パソコンの画面に『チュー』でもしとったんかいね?」

「なんが『チュー』や!『チュー』も頬ずりもせえへん。匂いかて嗅げへんて」

「え?!」


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「(しまった!)」


ビエール・トンミー氏は、自らの『失策』に戸惑った。


「(濡れ衣だ!ボクは、『エロ本』なんか買ってないし、『エロ本』にもパソコン画面にも『興奮』なんかしてないのに!)」




と自らに云い聞かせる言葉は、嘘ではなかったが、嘘でもあることを自覚していた。



(続く)




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