「(ああ、ボクは知っている。この本に、あの娘の手が触れたのだ。だから、ボクはこの本に…)」
ビエール・トンミー氏は、友人のエヴァンジェリスト氏には、自分は『快楽』を求めてはいない、と云ったものの、買いはしたがまだ読んではない本『アーミッシュの老いと終焉』に、キスをし、頬ずりをし、匂いを嗅いだ自分自身を誤魔化すことはできなかった。
しかし….
「(アイツが、知っているはずはないんだ)」
その本を購入した駅前の書店の店員であるあの娘のこと、その娘がレジでその本に触ったこと、そして、自分がその本に対してした変態的な行為を、エヴァンジェリスト氏が知るはずもないのに、友人に見透かされたように思ったのは、自身の心の問題である、と考え、自らを落ち着かせようとした。
「(それに、ここもうしばらく、いうことをきかないんだ…)」
と、ビエール・トンミー氏は、自らの股間に視線を落とした時、また、iPhone 14 Proの画面が軽く、自動でスクロールした。
友人のエヴァンジェリスト氏からのIMessegeである。
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「いやあ、すまん、すまんのお。ワシ、ちょっとデリカシーが欠けとった」
「はあ?ちょっと欠けとるも何も、アンタにはハナからデリカシーちゅうもんは全然ないやろに」
「いやの。アンタ、『快楽』求めようにももう体がアンタの云うこときかんのじゃろ」
「ふん!ノーコメントじゃ。事務所を通してくれ」
「アンタは、アンタの云う通り、『快楽』求めとらん、いうか、求めることができんのんじゃろう」
「勝手なことを!あ、ノーコメントじゃ。事務所を通してくれ」
「で、アンタ同様、『快楽』を求めとらん『アーミッシュ』なんじゃが、ワシ、疑問があるんよ」
「何じゃ?」
「いくら『快楽』を求めんいうても、思春期にはどうしょうもない『衝動』いうもんがあるじゃろ?」
「ああ、そりゃそうや」
「アンタかて、若い頃は、そんな『衝動』にかられ、『快楽』を求めまくって、『原宿の凶器』と呼ばれた時期もあったじゃないねえ」
「まあ、それは否定はできひんなあ」
「『アーミッシュ』の若もんも、『衝動』はあるじゃろうし、それを抑えきれるん?」
「おお、そこんとこかいな。アンタにしては、まあ、エエ質問やな。まあ、教えたろ。ええか、『ラムシュプリンガ』いうんがあるらしいんや」
「え?『ラムシュプリンガ』?『アーミッシュ』の若もんも、『アグネスラム』みたいな女の子に、シュプシュプいうて、クラクラすることなん?」
「また、無理矢理な解釈してくんねやなあ。何や、『シュプシュプ』て。ちゃうで。いや、ちゃいへんねんやけどなあ」
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友人エヴァンジェリスト氏の戯けた解釈には苛立ちを覚えなくはなかったが、自らの『快楽』、変態的行為を意識させられる会話から、『アーミッシュ』の生態へと話題が展開、ビーエル・トンミー氏は、落ち着きを取り戻した。
(続く)
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