「『ケペル先生』の『ケペル』って、どういう意味なんだろう?」
と、『少年』は、父親を比した当時(1967年である)、NHKで放送されていた子ども向けの番組『ものしり博士』の登場人物(人形だが)『ケペル先生』について疑問を持ってしまった。牛田方面に向う『青バス』(広電バス)の中であった。
「日本語は喋ってるけど、日本人みたいな名前じゃないし」
と、『少年』は、父親に投げかけようとしていた別の質問の前に、『ケペル先生』に囚われてしまった。八丁堀で見たデパート『天満屋』に関する話、更に、『天満屋』から派生した『シーボルト』や『狛犬』、『岡山』等々の話をようやく終え、『青バス』が牛田に着こうとしていたが、今、『少年』は、今度は、当時(1967年である)、NHKで放送されていた子ども向けの番組『ものしり博士』で、子ども向けに科学のこと、歴史のこと等、色々なことを解説する登場人物(人形だが)『ケペル先生』ついて話し始めてしまったのであった。
「『ものしり博士』は、あまり見たことはないが、『ケペル先生』の『ケペル』は、『ケプラー』と『コペルニクス』とを掛け合わせたんじゃなかったかなあ?」
「え?『ケプラー』?『コペルニクス』?」
「ああ…『ケプラーの法則』って、まだ習ってないかあ」
「『ケプラーの法則』?」
「『ケプラー』は、16世紀から17世紀にかけていたドイツの天文学者でな、『ケプラーの法則』は、その『ケプラー』が発見した惑星の運動に関する法則なんだよ」
「惑星の運動?」
「ああ、『ケプラーの法則』って、三つの法則があるんだ。一つが、惑星は、太陽を焦点の一つとした楕円の軌道を描く、というもものだ」
「焦点の一つ?って、ことは、太陽の他にもう一つ焦点があるの?」
「そうだ。楕円っていうのは、焦点が2つあるものだからな」
「もう一つの焦点には、何があるの?」
「何もないさ。正確には、そこには宇宙空間はあるが、ただそれだけさ」
「へ?何もないのに、焦点になっているの?」
「『ケプラー』も、もう一つの焦点に何もないことでがっかりした、とも云われているらしい。何もないのに、焦点になっているのはどうしてか、という疑問は、云い換えると、何故、楕円軌道になるか、ということなんだが、そこは、遠心力と太陽の万有引力との釣り合いの結果、ということになるんだ。そのことをちゃんと知りたかったら、大学の理学部に行った方がいいかもしれない。『ケプラー』自身、『万有引力』のことは知らなかったからな」
「ああ、『万有引力』って、『ニュートン』が発見したんだよね?」
「そうだ。『ニュートン』は、『ケプラー』より少し後の人だからな。『ケプラー』は『万有引力』のことは知らなかったが、『ケプラーの第一の法則』があったから、『ニュートン』は、『万有引力』を発見できたんだと思う」
「ということは、『ケプラー』ってやっぱり凄い人だね」
「そうだな。で、二つの目法則は、ある惑星と太陽との間の直線は、一定の時間に常に同じ面積を描く、というものだ」
「へええ…少しわかったような、でも、分からないような」
「三つ目の法則は、惑星の公転周期は太陽からの平均距離の三乗に比例する、というものだ」
「ああ…なんだか、惑星みたいに眼が回りそうだあ。でも、『ケプラー』って本当に凄い人だね。そんな難しいことを発見したなんて!それも、16世紀から17世紀にかけての頃の人なんでしょ?その時期って…」
と、『少年』が、自らの頭を少し、惑星のように回していた時、
「もうそろそろ着くよ」
と、『少年』の妹が、バスの中でずっと話し込んできた父親と兄に声をかけた。
(続く)
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