2022年4月15日金曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その199]

 


「え?『コペルニクス的転回』?」


と、『少年』は、父親が云った言葉を鸚鵡返しした。牛田方面に向う『青バス』(広電バス)の中であった。しかし…


「『コペルニクス』が、でんぐり返しをしたの?」


と、『少年』は、父親同様、聡明ながらも、まだ小学校を卒業したばかりの子どもらしい発想をしてみせた。『少年』は、父親に、NHKで放送されていた子ども向けの番組『ものしり博士』の『ケペル先生』の『ケペル』の名前の由来について、訊き、少年』の父親は、昔の2人の天文学者の名前、『ケプラーと『コペルニクス』とを掛け合わせたのではなかったか、と『少年』に教えていた。




「まあ、でんぐり返しをしたようなものだな。上のものを下に、下のものを上にする、そう、価値観を全くひっくり返すことを『コペルニクス的転回』というんだからな」

「ああ、そういうことなんだね。でも、みんなが云っていることと違うことを考えたり、云ったりするのって、なかなかできないよね」

「そうだ。人間って、固定観念に縛られているからな」

「そんな『転回』ができた『コペルニクス』って、やっぱり凄い人なんだね。『物知り博士』は、2人ともとっても凄い『ケプラー』と『コペルニクス』とを合わせたくらい凄いから、『ケペル先生』って名前になったんだね」

「はっきりは覚えていないが、そうだったんじゃないかとは思う。でもな、ひょっとしたら、なんだが、『スカラベ』からきているのかもしれない」


と、『少年』の父親がまた、『少年』が聞きなれない言葉を発した時、


「降りるわよ


と、『少年』の母親が、バスの中でまだ話し込んでいる夫と息子に声をかけた。



(続く)




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