(夜のセイフク[その60]の続き)
「『国』ってなんだ?」
冊子『東大』に掲載された『されど血が』という脚本、のようなものの中のビエール君は、独り叫ぶ。
「『国』なんてものは、どこにもないのだ」
ビエール・トンミー君は、自身の分身のようなビエール君の言葉に動揺する。
「(エヴァ君って、一体、何者なんだ!?)」
冊子『東大』に掲載された『されど血が』という脚本、のようなものの中のビエール君は、ビエール・トンミー君身の分身であったが、同時に、『されど血が』の作者であるエヴァンジェリスト君の分身でもあるのだ。
「(おチャラけコブラツイスト男だと思っていたが、彼の心の中には何があるのだ?)」
ビエール・トンミー君は、『されど血が』を読み進める。
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
「『国』なるものがあるとすると、それは、『人』の集りなのだ。『国』を守る為に戦争をして、一人でも『国民』を死なせたら、その戦争は『負け』なのだ。『人』を守ることができなかったからなのだ」
『されど血が』という脚本、のようなものの中のビエール君は、叫び続ける。
(続く)
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