2018年9月9日日曜日

夜のセイフク[その61]





「『国』ってなんだ?」

冊子『東大』に掲載された『されど血が』という脚本、のようなものの中のビエール君は、独り叫ぶ。

「『国』なんてものは、どこにもないのだ」

ビエール・トンミー君は、自身の分身のようなビエール君の言葉に動揺する。

「(エヴァ君って、一体、何者なんだ!?)」

冊子『東大』に掲載された『されど血が』という脚本、のようなものの中のビエール君は、ビエール・トンミー君身の分身であったが、同時に、『されど血が』の作者であるエヴァンジェリスト君の分身でもあるのだ。

「(おチャラけコブラツイスト男だと思っていたが、彼の心の中には何があるのだ?)」

ビエール・トンミー君は、『されど血が』を読み進める。

1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。

「『国』なるものがあるとすると、それは、『人』の集りなのだ。『国』を守る為に戦争をして、一人でも『国民』を死なせたら、その戦争は『負け』なのだ。『人』を守ることができなかったからなのだ」


『されど血が』という脚本、のようなものの中のビエール君は、叫び続ける。


(続く)



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