2018年9月15日土曜日

夜のセイフク[その67]




夜のセイフク[その66]の続き)


「うん、それはねえ。色々考えたんだが……聞いたことがあるんだ」
「何、聞いたん?」
「(そういうことは、どうでも良くって….)」

エヴァンジェリスト君とソフトテニス部の部員の女子生徒とのやり取りに口を挟めぬビエール・トンミー君は、口をパクつかせていた。

1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。放課後であった。

「ヒロコは、江波に住んでるだろ?」
「ほうよね」
「江波には、『すず』って云う人がいたらしい。戦時中にね」
「へええ、『すず』….」



「『すず』は、呉に嫁いだんだそうだ。隣に住んでいた人から聞いた。ウラの『すず』ちゃんは、綺麗だったって」
「ほうねえ、綺麗じゃったん?ええね、『すず』。うん、アタシ、『すず』ちゃんなんじゃね。ふふ」
「(そういうことは、どうでも良くって….)」

『されど血が』という脚本、のようなものをベースとする放送劇の登場人物の名前に関する、エヴァンジェリスト君とソフトテニス部の部員の女子生徒とのやり取りに口を挟めぬビエール・トンミー君は、口をパクつかせていた。

「ビエ君の名前も変えようかと思ったんだけど…..」

エヴァンジェリスト君は、ビエール・トンミー君が予想だにしなかったことを云い出した。


(続く)



0 件のコメント:

コメントを投稿