2018年9月21日金曜日

夜のセイフク[その70]





エヴァンジェリスト君は、『何会』という組織を主宰した。その後継組織として『東大に入る会』も立ち上げた。

そして、『何会』とか『東大』という名の冊子のようなものを刊行し、そこで、小説のようなもの、詩のようなもの、脚本のようなものを発表した。

更に、その脚本のようなものをベースとした放送劇のようなものをプロデュースし、自ら監督となり、そして今、その主題曲も演奏したのだ。

1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。放課後であった。

『されど血が』という脚本、のようなものをベースとする放送劇の本番の録音を行っていた。

「♫🎶♩♫」

エヴァンジェリスト君が、主題曲をフルートで演奏していた。

「(要するに、エヴァ君は目立ちたがり屋なのだ)」



ビエール・トンミー君は、自分の他のもう一人の秀才美少年を蔑んでそう思ったのではなかった。

「(ボクの方が、もっと秀才でもっと美少年だが、ボクにはできない)」

正直なところ、ビエール・トンミー君には、友人であるエヴァンジェリスト君が創ったものが、いいものであるのかどうか、分らなかった。

組織にせよ、冊子のようなものにせよ、著作物にせよ、音楽にせよ、エヴァンジェリスト君が創ったものの良さを理解することはできなかった。

「(実は、詰まらないものなのかもしれない。多分、実際、つまらないのだ。しかし、エヴァ君は、創るのだ。素晴らしいもの、面白いものであれ、詰まらないもの、くだらないの極みなものであれ、彼は創る。恥じることなく、躊躇することなく、彼は創る。だが、ボクには創れないのだ。まあ、創りたいとも思わないが)」

エヴァンジェリスト君のフルート演奏が終った。


(続く)


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