2018年6月10日日曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その115]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、官僚が為政者の為に国会で嘘をつくという『曲がったこと』をする場合、その官僚に妻(或いは、夫)がいるとしたら、妻(或いは、夫)に対しても恥を感じることはないのか、と思うようになることをまだ知らなかった。


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1981年の夏の軽井沢、会社のテニス部の合宿でのことであった。

「ん、ぷっ…….!」
「ぷっ、ふぁ~」

エヴァンジェリスト氏の立つコートの周囲で、ドヨメキが起き、哄笑が渦巻いた。

「いくわよお~!」

エヴァンジェリスト氏が、奇声を発して、サーブを打ったのだ。

「ん、もう……!」

呆れながらも、コートの周囲は笑みに包まれた。女性部員たちも顔が綻んでいた。

しかし、テニス部の部長であるハンソデ先輩はそれを許さなかった。

「お前、ここに何しに来た!」

ハンソデ先輩は正しい。合宿は、テニスをする場である。ハンソデ先輩は、『曲がったことが嫌いな男』なのだ。

だが、エヴァンジェリスト氏にとって、ハンソデ先輩は、自身の修士論文『François MAURUAC』論的世界の中に於ける『義人』であった。

エヴァンジェリスト氏は、既成の価値観を嫌悪する。

「いくわよお~!」

は、既成の価値観を破壊する為の言葉であったのだ。

しかし、エヴァンジェリスト氏の股間は、『スコート』を履いた女性部員達を見て、彼女達の剥き出しの脚を見て、『硬直』していた。

「(ボクは、『曲がったことが嫌いな男』だ。だから、股間だって『真っ直ぐ』になるのだ)」

…….しかし、エヴァンジェリスト氏は、自身が詭弁を弄していることを知っていた。

だから、頭の中で、ハンソデ先輩の言葉がリフレインしていたのだ。

「なんで、テニス部に入ったんだ?」
「お前、いい加減にしろよ!」
「お前、真面目にやれえ!」

……..その時であった。

『キュ、キュ、キューッ!』






「(うっ…..)」

うたた寝し、いつの間にかセダンの後部座席で横になっていたエヴァンジェリスト氏は、シートの背に体を打ち付けた。

1982年の冬、会社の同期の皆でスキーに行くことなり、エヴァンジェリスト氏が、同期の1人であるオン・ゾーシ氏の運転するセダンに乗って、スキー場に向っていたのであった。

セダンの前方席には、運転するオン・ゾーシ氏とその恋人のニキ・ウエ子さんがいた。

2人は付合っていたが、会社の連中には内緒にしていた。しかし、バスでスキー場に向かう皆とは別に、2人はクルマで行きたかった。そこで、カモフラージュの為に、調子者だが意外に口が固く信頼の置けるエヴァンジェリスト氏に同乗を依頼したのである。

「ごめんね、エヴァさん」

オン・ゾーシ氏が、エヴァンジェリスト氏に詫びた。

「また、スリップしたんだ。今度は、ちょっとだけだけどね」

そう、今回のスリップの前に一度、スリップしていたのだ。軽井沢の坂であった。

結局、その中を登りきれす、セダンは、予定地は別の道を行くことになった。

しかし、別の道は、坂道ではなかったものの、やはり凍結しており、ちょっとではあるが、スリップし、オンゾーシ氏は、セダンのブレーキを踏んだのだ。



「ああ、大丈夫だあ…….(いや、むしろ助かった)

夢の中では、ラケットを手にしたハンソデ先輩が仁王立ちしていた。

「お前、いい加減にしろよ!」

スリップ、急ブレーキのお陰で、怖いハンソデ先輩から逃れることができたのだ。

でも、気付いてみると(うたた寝から醒めると)、

「お前、真面目にやれえ!」

というハンソデ先輩を前に、『硬直』していた股間も縮み上がっていた。

「回り道だし、凍結しているから時間かかっちゃってごめんね、エヴァさん」

振り向いてそう云ったオンゾーシ氏を顔を見た瞬間、縮み上がっていた股間が再び、ピンと『硬直』した。


(続く)



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