(夜のセイフク[その41]の続き)
『東大に入る会』は、『何会』を改名しただけのものであった。少なとくもビエール・トンミー君には、そうとしか思えなかった。
「(結局、エヴァ君は、自分の書き物を発表する『場』が欲しいだけなんだ)」
ちぎったノートのページをホッチキス止めした冊子『何会』は、同じくちぎったノートのページをホッチキス止めした冊子『東大』になった。
「東大に入ろうね」
エヴァンジェリスト君は、そう云った。
「(ボクが馬鹿だったんだ……)」
エヴァンジェリスト君の言葉を間に受けた自分の愚かさを知った。
「(この『東大』だって、どうせ碌でもないことしか書いてないのだろう)」
とは思ったものの、一縷の望みを抱いて、ビエール・トンミー君は、机の上に置かれた、ちぎったノートのページをホッチキス止めした冊子『東大』の表紙をめくった。
「(東大に入る為の手作りの問題集かもしれない)」
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
「(こ、こ、これは!)」
(続く)
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