(夜のセイフク[その39]の続き)
「(ミージュ君には悪いが、彼には東大は無理だ)」
ビエール・トンミー君は、口の中で呟いた。
「(エヴァ君は何を考えているのだ!?逆立ちしても東大には入れはしない者を『東大に入る会』に誘うなんて…..)」
しかし、ビエール・トンミー君は、分っていなかった。彼には、東大に十分入れる程の知能はあったが、その知能を持ってしても、エヴァンジェリスト君の考え、行動を読み切ることはできなかったのだ。
「(この7ホームの中で東大に入れるのは、ボクとエヴァ君だけだ)」
教室の中を見渡しながら、自分とエヴァンジェリスト君が並んで赤門を入って行く姿を思い浮かべた。
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
「(正直なところ、ボクも『東大に入る会』に入るまでは、東大に行くという考えは持っていなかった。だが、エヴァ君が、ボクに自分の頭脳がどのようなものか思い起こさせてくれた)」
しかし、そんなビエール・トンミー君の思いとは別に、『東大に入る会』には、ミージュ・クージ君の他にも何人かの男女の生徒が入会した(エヴァンジェリスト君に入会させられた)。勿論、東大に入る学力があるとは思えぬ生徒たちである。
(続く)
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