2018年8月1日水曜日

夜のセイフク[その23]

 





「(月にうさぎがいなかったことは、あの前年に分ったのだ)」

2018年7月、ビエール・トンミー氏の自邸である。

『火星大接近』の夜空を見る為に自邸の庭に出たビエール・トンミー氏は、世界が大きく変った高校生時代を思い出していた。

「(アームストロング船長は、月でうさぎを見ることはなかったはずなのだ)」

1969年、アポロ11号は、人類で初の月面着陸を果したのであった。



「(なのに、エヴァの奴、何を白々しく、『月にうさぎがいた』だなんて書きやがって….)」

広島県立広島皆実高校1年7ホーム(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)の生徒であったビエール・トンミー君が、『何会』と表紙に書かれた見すぼらしい冊子のようなものに載せられた『月にうさぎがいた』なる書き物を読まされたのは、アポロ11号のニール・アームストロング船長とエドゥイン・オルドリン操縦士とが月面に足を着いたその翌年(1970年)であった。

「家に持って帰っていいよ。ゆっくり読めばいいさ」

とエヴァンジェリスト君に云われたが、ビエール・トンミー君は、『何会』なる冊子を、その巻頭の文章をその場で読んだ。『月にうさぎがいた』なる書き物である。

「(くだらん!....ああ、実にくだらん!)」


(続く)



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