2018年8月31日金曜日

夜のセイフク[その52]





「ええっ?.....何を?」

不意をつかれたビエール・トンミー君のは、自身の頭の上から降ってくる声の方を見上げ、訊いた。

「発表会さ」

エヴァンジェリスト君は、いつものように標準語で話し掛けてきていた。

1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。

「発表会?」
「この前のホームルームで石橋先生が仰ったじゃないか」
「ああ…..」

ビエール・トンミー君は、1年7ホームの担任の『石橋基二』先生が、ホームルームの時間で、任意で作ったグループでなんらかの発表をしてもらう会を開く、と宣言されたことを思い出した。

「『東大に入る会』では、ドラマをするからね」
「ドラマ?」
「ああ、ドラマさ。放送劇だ」
「ほ、放送劇….」
「テープに録るのさ」
「ああ…」
「でね….ふふ….主演は君さ。ふふ」


「えっ、えっ、ええー!」


(続く)


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