(夜のセイフク[その24]の続き)
「(ああ、もし、本当に月にうさぎがいたんだったら…..)」
月にいたうさぎを連れ帰った宇宙飛行士は、うさぎと共に、会見に臨み、
『地球の皆さん、月には本当にうさぎがいたんです!』
と、云うのだ。
「ちっ!くだらん。くだらんにもほどがある」
ビエール・トンミー君は、再び、舌打ちをし、呟きを続けた。
「万博で…..」
『万博』という言葉に反応した斜め前方席の女子生徒が、振り向かれてしまったので、見たくはなかったが、再び、『月にうさぎがいた』なる読み物が掲載された冊子『何会』を手に取り、表紙をめくる素振りをした。
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
「(月にうさぎがいたんだったら、万博で、アメリカ館は、もっともっと大変なことになっていたはずだ)」
ビエール・トンミー君は、その年(1970年)、大阪で開催された万国博覧会に行った時のことを思い出した。
「(『石』だけであんな大騒ぎだったんだから….)」
大阪万博のアメリカ館では、『月の石』が展示されていたのであった。
(続く)
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