2018年8月21日火曜日

夜のセイフク[その43]





ちぎったノートのページをホッチキス止めした冊子『東大』の表紙をめくり、その中を見た時、ビエール・トンミー君は、そこに、『東大に入る為の手作りの問題集かもしれない』と一縷の望みを託していたことを恥じた。

「(な、な、なんなんだ、これは!)」

エヴァンジェリスト君のことを、自分の他の『もう一人の秀才美少年』と評価していたことを悔いた。買い被りであった。

「(ミージュ・クージ…..って……)」

ビエール・トンミー君は、教室の入り口近くの席で、エヴァンジェリスト君に話し掛けられているミージュ・クージ君を見た。

1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。

「(…….で…..『ヒーバー』?)」

聞きなれぬ耳慣れぬ言葉であった。



「『ミージュ・クージ vs ヒーバー』?」

思わず声を出したので、隣席の女子生徒が顔を向けた。ビエール・トンミー君は、急いで冊子『東大』を英語の教科書で隠した。

「なんか云うたあ?」

女子生徒が問い掛けて来た。


(続く)



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