(夜のセイフク[その36]の続き)
『男は東大、女は御茶ノ水』という言葉は、アカモン先生のご託宣であったのだ。
「(エヴァ君という男は…..)」
エヴァンジェリスト君は、アカモン先生の影響を受けたのだ。影響を受けたというか、アカモン先生の言葉を真に受けたのだ。
「(アポロ11号に影響され、『月にうさぎがいた』を書いたと思ったら、今度は….)」
ビエール・トンミー君は、自分の席に横に立つ美少年の友人を、呆れたという表情を隠さず、見上げた。
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
「(今度は、アカモン先生に影響されたのか。意外にミーハーな男だ)」
アカモン先生は、1970年当時、広島県立広島皆実高校の英語の非常勤講師であった。
「男は東大、女は御茶ノ水」
が口癖の60歳を過ぎたお爺ちゃん先生である。そして、自身、東大を卒業した先生であった。
「東大に入ろうね。君も、君なら東大に入れるよ」
というエヴァンジェリスト君は、『土埃が舞い込むその時、知っていた….』という『詩』のようなもので虚無を描いたとは思えぬ屈託のない笑顔であった。
(続く)
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