2018年8月15日水曜日

夜のセイフク[その37]





『男は東大、女は御茶ノ水』という言葉は、アカモン先生のご託宣であったのだ。

「(エヴァ君という男は…..)」

エヴァンジェリスト君は、アカモン先生の影響を受けたのだ。影響を受けたというか、アカモン先生の言葉を真に受けたのだ。

「(アポロ11号に影響され、『月にうさぎがいた』を書いたと思ったら、今度は….)」

ビエール・トンミー君は、自分の席に横に立つ美少年の友人を、呆れたという表情を隠さず、見上げた。

1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。

「(今度は、アカモン先生に影響されたのか。意外にミーハーな男だ)」

アカモン先生は、1970年当時、広島県立広島皆実高校の英語の非常勤講師であった。

「男は東大、女は御茶ノ水」

が口癖の60歳を過ぎたお爺ちゃん先生である。そして、自身、東大を卒業した先生であった。



「東大に入ろうね。君も、君なら東大に入れるよ」

というエヴァンジェリスト君は、『土埃が舞い込むその時、知っていた….』という『詩』のようなもので虚無を描いたとは思えぬ屈託のない笑顔であった。


(続く)



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