(夜のセイフク[その40]の続き)
「これからは、これだよ」
というエヴァンジェリスト君の言葉と共に、自らの机の上に置かれた物を見た時、ビエール・トンミー君は自身の考えが愚かであったことを知った。
「家に持って帰っていいよ。ゆっくり読めばいいさ」
ネイティヴな広島人であるのに広島弁を使わぬもう一人の美少年は、そう云うと、ビエール・トンミー君の席から離れて行った。
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
「(こ、こ、これは………!)」
机の上に置かれたのは、ちぎったノートのページをホッチキス止めした冊子のようなものであった。
「(『東大に入る会』って、東大に入ることを目的とした『会』ではなかったのか!)」
ちぎったノートのページをホッチキス止めした冊子のようなものの表紙には、汚い手書きの文字で『東大』と書いてあったのだ。
「(こ、こ、これは………!)」
そう、そ、そ、それは、『何会』というタイトルが、『東大』と変っただけのものとしか見えなかった。
(続く)
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