(夜のセイフク[その48]の続き)
「(くだらんだけならまだしも、ケシカランぞ、これは!)」
ビエール・トンミー君は、鼻の両穴を大きく開き、そこから強く息を吐き出した。
「(何故、ミージュ君なんだ!)」
許せなかった。エヴァンジェリスト君の一番の友だちは自分であるとの自負があった。
「(怪獣退治には、知力が必要なはずだ!)」
許せなかった。知力なら、自分に勝る者はいないとの自負があった。
ビエール・トンミー君は、教室の入り口近くの席で、机に肩肘をついて鼻くそをほじくるミージュ・クージ君を見遣った。
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
「(『ビエール・トンミー vs ヒーバー』であるべきだろうに!)」
ビエール・トンミー君は、ビエール・トンミー君ともあろう男が、自身気付かぬうちに、『ミージュ・クージ vs ヒーバー』が掲載された冊子『東大』の虜になっていた。
(続く)
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