美しい白蛇の指の先にあったものは、光沢を湛えた白いものであった。ビエール・トンミー氏が魅入られたJANA機のスチュワーデス(CA)の指に負けず美しいものであった。
ビエール・トンミー氏は、目を凝らした。
「パソコンだ……ノートPCだ」
そう、スチュワーデス(CA)は、前方席の男の白く美しいノートPCを指しながら、男に話し掛けていたのだ。
今、ビエール・トンミー氏は、スチュワーデス(CA)が前方席の男に向け発した言葉を理解した。
「iBookですか?」
スチュワーデス(CA)は、そう、前方席の男に声を掛けたのだ。
前方席の男が手元のテーブルに置いていたのは、AppleのiBookなのだ。
「ええ」
男が答えた。
「いいですよねえ。アタシ、迷ったんです。Windows使ってるんですけど、iBookに切換えようかと思って……..でも、何か、勇気がなくって…….」
スチュワーデス(CA)は、小首を傾げるような仕草をした。
「ああ」
男は愛想なく答えた。
「いいんでしょう?」
スチュワーデス(CA)の言葉遣いは、もうスチュワーデス(CA)のそれではなくなっていた。
「ええ、いいですよ」
と、答えながら、男はスチュワーデス(CA)の方に顔を向けた。
ビエール・トンミー氏は、その時、初めて男の顔を見た。
「!」
ビエール・トンミー氏は、固った………..
(続く)