2017年11月19日日曜日

「iBookですか?」[その13](垂涎のエヴァンジェリスト氏)



2002年11月8日、長崎を11:35発のJAL184便でのことであった。

エヴァンジェリスト氏は、離陸前に眠りに落ちていたが、飛行機が水平飛行に入り、ベルト着用サインが消え、機内での飲み物サービスが始まる頃に目を覚ました。

りんごジュースをもらい、飲み干すと、前の席の背からテーブルを下ろし、膝の上に置いていたiBookをその上に置き、仕事を始めた。

iBookで、メールを整理し、顧客提示用資料を作成していた。その時であった。

「iBookですか?」

突然、斜め後ろから、女性の声が聞こえてきた。

「?」

エヴァンジェリスト氏は、覗き込んでいたiBookから顔を上げた。






「iBookですか?」

そう声を掛けてきていたのは、スチュワーデス(CA)であった。彼女は、エヴァンジェリスト氏の席の横に立った。

「ええ」
「いいですよねえ。アタシ、迷ったんです。Windows使ってるんですけど、iBookに切換えようかと思って……..でも、何か、勇気がなくって…….」

スチュワーデス(CA)は、小首を傾げた。

「ああ」
「いいんでしょう?」

スチュワーデス(CA)の言葉遣いは、もうスチュワーデス(CA)のそれではなくなっていた。

「ええ、いいですよ」
「使い易いんですよね。使っている人に訊くと皆、そう云うんですう



『ですう』と、恋人に対して、とまではいかないものの、親しい人に対する物の言いようであった。


(続く)




0 件のコメント:

コメントを投稿