命令した部下から、逆に『命令』されるという惨劇にあった翌月(2002年11月)、エヴァンジェリスト氏には、その惨劇を忘れさせるような、他人も羨むある出来事が起きたのであった。
友人であるビエール・トンミー氏が知ったなら、歯ぎしりすること必定な出来事だ。
その日、エヴァンジェリスト氏は、久しぶりにスチュワーデス(CA)に声を掛けられたのだ。
しかし、実はそれまでも、エヴァンジェリスト氏は、時々、スチュワーデス(CA)に声を掛けられていたのだ。
飛行機に搭乗し、かなり後方の席の通路側に座っていたところ、前方から歩いてきたスチュワーデス(CA)に、突然、声を掛けられたことがあった。
「今日は、ハワイからですか?」
エヴァンジェリスト氏の頭は、突然のスチュワーデス(CA)の言葉に混乱した。
いや、『ハワイから』ではない。いやいや、スチュワーデス(CA)は本当に『ハワイ』と云ったのか?自分の聞き間違いではないのか?
しかも、自分は、そのスチュワーデス(CA)のことを知らない。
しかし、そのスチュワーデス(CA)は、自分のことを知っているかの如く、話し掛けてきた。それは確かだ。
でも、仕事の忙しさで忘れているだけで、いつかどこかでスチュワーデス(CA)と『親しく』なってしまったことでもあったであろうか?
エヴァンジェリスト氏に、スチュワーデス(CA)の知り合いはいなかった。
しかし、当時、年間数え切れない程、出張で飛行機には乗っていたので、エヴァンジェリスト氏の方は覚えていなくても、スチュワーデス(CA)の方が、常連客としてエヴァンジェリスト氏のことを覚えている、ということはあったかもしれない。
或いは、その便がANA便であったか、JAL便であったのかは覚えていないが、スチュワーデス(CA)が宿泊する全日空ホテルやホテル日航にエヴァンジェリスト氏も宿泊することがあったので、そこで『遭遇』していたのかもしれない。
勿論、ただ『遭遇』しただけでは、スチュワーデス(CA)が一乗客(一宿泊客)のことを覚えているとは思えない。
エヴァンジェリスト氏には記憶はないが、ホテルで『遭遇』したスチュワーデス(CA)を自分の部屋に誘い入れたか、或いは、スチュワーデス(CA)の部屋に誘い入れられたことでもあったのであろうか?
「今日は、ハワイからですか?」
というスチュワーデス(CA)の言葉に、エヴァンジェリスト氏の頭は大混乱状態に陥ったのだ。
そして、混乱のまま、エヴァンジェリスト氏は、席からそのスチュワーデス(CA)を見上げて、
「は?」
と息を漏らした。
すると、自分を見上げて来た男の顔を見て、
「は!?....し、失礼しました」
と、スチュワーデス(CA)は、そそくさと後方に去って行った。
エヴァンジェリスト氏はまだ、呆然としていた。
何が起きたのか、分らなかった。
「今日は、ハワイからですか?」
というスチュワーデス(CA)の質問は何であったのか、分らなかった。
「誰かと見間違えたのだ」
混乱した頭は、少しして、そう結論づけたが、まだ疑問が残った。
あのスチュワーデス(CA)は、自分のことを知っているかの如く、話し掛けてきた。だが、人違いだったのだ。自分の知っている顧客(常連の搭乗者)と勘違いしたのだ。
しかし、だ。
「今日は、ハワイからですか?」
というスチュワーデス(CA)の口のききかたが気になった。
そのスチュワーデス(CA)の口のききかたは、ただ見知っている顧客(常連の搭乗者)に対するものとは違っていたように思えたのだ。
あのスチュワーデス(CA)の口のききかたは……….
(続く)
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