2017年11月18日土曜日

「iBookですか?」[その12](垂涎のエヴァンジェリスト氏)




エヴァンジェリスト氏は、搭乗した飛行機で、スチュワーデス(CA)から、

「今日は、ハワイからですか?」

と、声を掛けられたことがあった。スチュワーデス(CA)は、憧れの(或いは、『一線』を越えた)同僚の機長と勘違いしたようであった。

「試験ですか?」

と、声を掛けられたこともあった。エヴァンジェリスト氏が、シショー・エヴァンジェリストに『講演』の仕方の指導する姿を、そのスチュワーデス(CA)が見たからであった。

いずれの場合も、スチュワーデス(CA)は、エヴァンジェリスト氏に特殊な感情を抱いたように見えた。

しかし、邪心のないエヴァンジェリスト氏は、彼女たちの『気持ち』に応えることはしなかった。

エヴァの友人であるビエール・トンミー氏がそこのことを知ったなら、

「もったいない!」

と、叫んだであろう。

そして、三度、

「もったいない!」

と、ビエール・トンミー氏が叫びそうな出来事が、エヴァンジェリスト氏の身に起きたのであった。

それは、2002年11月8日、長崎を11:35発のJAL184便でのことであった……..






一年中、出張ばかりしており、飛行機に乗り慣れているエヴァンジェリスト氏は、搭乗すると、離陸する前から着席したまま眠りに落ちる。

しばらくして、飛行機が水平飛行に入り、ベルト着用サインが消え、機内での飲み物サービスが始まる頃になると、目を覚ます。

いやしい男である。ジュースを飲みたいのであろう。エヴァンジェリスト氏はいつも、りんごジュースを頼むのだ。

まあ、ビエール・トンミー氏よりはマシであろう。

ビエール・トンミー氏も、水平飛行に入り、ベルト着用サインが消えた頃に目を覚ます。彼の場合は、飲み物目当てではなく、スチュワーデス(CA)目当てだ。ビエール・トンミー氏は、スチュワーデス(CA)の胸を見る。脚をみる。お尻も見る。助平爺め。


………2002年11月8日、長崎を11:35発のJAL184便でも、エヴァンジェリスト氏は、離陸前に眠りに落ち、飛行機が水平飛行に入って、ベルト着用サインが消え、機内での飲み物サービスが始まる頃に目を覚ました。

りんごジュースをもらい、飲み干すと、前の席の背からテーブルを下ろし、膝の上に置いていたiBookをその上に置き、仕事を始めた。

エヴァンジェリスト氏は後に(2016年に)、仕事依存症と診断されることになるが、この頃(2002年当時)、既に仕事とプライベートの別が殆どなく、寝ていない時は殆ど仕事をしていたのだ。

iBookで、メールを整理し、顧客提示用資料を作成していた。その時であった。

「iBookですか?」

突然、斜め後ろから、女性の声が聞こえてきた。

「?」

エヴァンジェリスト氏は、覗き込んでいたiBookから顔を上げた。



(続く)






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