2017年11月30日木曜日

「Windowsですか?」(その8)[流涎のビエール・トンミー氏]



美しい白蛇の指の先にあったものは、光沢を湛えた白いものであった。ビエール・トンミー氏が魅入られたJANA機のスチュワーデス(CA)の指に負けず美しいものであった。

ビエール・トンミー氏は、目を凝らした。

「パソコンだ……ノートPCだ」

そう、スチュワーデス(CA)は、前方席の男の白く美しいノートPCを指しながら、男に話し掛けていたのだ。

今、ビエール・トンミー氏は、スチュワーデス(CA)が前方席の男に向け発した言葉を理解した。






「iBookですか?」

スチュワーデス(CA)は、そう、前方席の男に声を掛けたのだ。

前方席の男が手元のテーブルに置いていたのは、AppleのiBookなのだ。

「ええ」

男が答えた。

「いいですよねえ。アタシ、迷ったんです。Windows使ってるんですけど、iBookに切換えようかと思って……..でも、何か、勇気がなくって…….」

スチュワーデス(CA)は、小首を傾げるような仕草をした。

「ああ」

男は愛想なく答えた。

「いいんでしょう?」

スチュワーデス(CA)の言葉遣いは、もうスチュワーデス(CA)のそれではなくなっていた。

「ええ、いいですよ」

と、答えながら、男はスチュワーデス(CA)の方に顔を向けた。

ビエール・トンミー氏は、その時、初めて男の顔を見た。

「!」



ビエール・トンミー氏は、固った………..


(続く)



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