飛行機が水平飛行に入ったあたりで目を覚ました。ビエール・トンミー氏は、前の席の背からテーブルを倒し、膝の上に置いていたノートPCをその上に置いた。
ノートPCの電源を入れ、
「ふーっ」
と息を吐いた。Windowsが立ち上がるのをしばらく待たないといけない。その間することがないので、顔を上げ、前方を見た。
スチュワーデス(CA)が、ワゴンで飲み物サービスを始めていた。
JANAのスチュワーデス(CA)は、粒揃いだ。そうだ、ビエール・トンミー氏が搭乗している便は、JANA機であった。
飲み物サービスをするスチュワーデス(CA)は、顔も美しかったが、指もなかなかに綺麗であった。
前方席の乗客に飲み物を渡すその指は、白く長かった。
「舐めたい」
ビエール・トンミー氏は、思わず、心の中でそう呟いた。
自分の番が来た。
「お仕事中、失礼します。飲み物は何になさいますか?」
ビエール・トンミー氏が、PCを開いていたので、スチュワーデス(CA)は、そう声を掛けて来た。
「りんごジュースをお願いします」
アップル・ジュースと云わないところが、通である。
「リンゴジュースですね。パソコンをお使いですので、蓋をお付けしますね」
と云って、スチュワーデス(CA)は、りんごジュースを入れたコップをビエール・トンミー氏にそっと差し出した。
ビエール・トンミー氏は、手をコップに伸ばした。
その時、ビエール・トンミー氏のごつい指とスチュワーデス(CA)の白く細い指が触れ合った。
「はっ」
として、ビエール・トンミー氏はコップから視線を上げた。
スチュワーデス(CA)は、顔にスマイルを浮かべた。
「いえ、わざとじゃないんです!」
ビエール・トンミー氏は、そう云いたかった。
(続く)
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