2017年11月23日木曜日

「Windowsですか?」(その1)[流涎のビエール・トンミー氏]



飛行機が水平飛行に入ったあたりで目を覚ました。ビエール・トンミー氏は、前の席の背からテーブルを倒し、膝の上に置いていたノートPCをその上に置いた。

ノートPCの電源を入れ、

「ふーっ」

と息を吐いた。Windowsが立ち上がるのをしばらく待たないといけない。その間することがないので、顔を上げ、前方を見た。

スチュワーデス(CA)が、ワゴンで飲み物サービスを始めていた。

JANAのスチュワーデス(CA)は、粒揃いだ。そうだ、ビエール・トンミー氏が搭乗している便は、JANA機であった。

飲み物サービスをするスチュワーデス(CA)は、顔も美しかたが、指もなかなかに綺麗であった。

前方席の乗客に飲み物を渡すその指は、白く長かった。

「舐めたい」

ビエール・トンミー氏は、思わず、心の中でそう呟いた。

自分の番が来た。

「お仕事中、失礼します。飲み物は何になさいますか?」




ビエール・トンミー氏が、PCを開いていたので、スチュワーデス(CA)は、そう声を掛けて来た。

「りんごジュースをお願いします」

アップル・ジュースと云わないところが、通である。

「リンゴジュースですね。パソコンをお使いですので、蓋をお付けしますね」

と云って、スチュワーデス(CA)は、りんごジュースを入れたコップをビエール・トンミー氏にそっと差し出した。

ビエール・トンミー氏は、手をコップに伸ばした。

その時、ビエール・トンミー氏のごつい指とスチュワーデス(CA)の白く細い指が触れ合った。

「はっ」

として、ビエール・トンミー氏はコップから視線を上げた。

スチュワーデス(CA)は、顔にスマイルを浮かべた。

「いえ、わざとじゃないんです!」

ビエール・トンミー氏は、そう云いたかった。


(続く)





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