(夜のセイフク[その42]の続き)
ちぎったノートのページをホッチキス止めした冊子『東大』の表紙をめくり、その中を見た時、ビエール・トンミー君は、そこに、『東大に入る為の手作りの問題集かもしれない』と一縷の望みを託していたことを恥じた。
「(な、な、なんなんだ、これは!)」
エヴァンジェリスト君のことを、自分の他の『もう一人の秀才美少年』と評価していたことを悔いた。買い被りであった。
「(ミージュ・クージ…..って……)」
ビエール・トンミー君は、教室の入り口近くの席で、エヴァンジェリスト君に話し掛けられているミージュ・クージ君を見た。
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
「(…….で…..『ヒーバー』?)」
聞きなれぬ耳慣れぬ言葉であった。
「『ミージュ・クージ vs ヒーバー』?」
思わず声を出したので、隣席の女子生徒が顔を向けた。ビエール・トンミー君は、急いで冊子『東大』を英語の教科書で隠した。
「なんか云うたあ?」
女子生徒が問い掛けて来た。
(続く)
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