(夜のセイフク[その49]の続き)
「最新号だよ」
とエヴァンジェリスト君が、美少年ビエール・トンミー君の机の上に、ちぎったノートのページをホッチキス止めした冊子のようなものをおいた。
冊子『東大』の第2号であった。
「家に持って帰っていいよ。ゆっくり読めばいいさ」
ネイティヴな広島人であるのに広島弁を使わぬもう一人の美少年は、そう云うと、ビエール・トンミー君の席から離れて行った。
1970年の広島県立広島皆実高校1年7ホームの教室である(クラスのことを皆実高校では『ホーム』と呼んだ。今もそうかもしれない)。昼休みであった。
「(家まで待てない…….『ヒーバー』って、どんな怪獣なんだ?.....いよいよ街(広島市)を襲ってくるのか?)」
気持ち以上に急いた手が、冊子『東大』の第2号の表紙をめくり、同じく気持ち以上に急いた眼が、『ミージュ・クージ vs ヒーバー』の第2章を追った。
「(ンフッ!...なんなんだ、これは!)」
自ら気付かぬ内に抱いて期待が大きかっただけに、失望も大きかった。
『ヒーバー』の正体は明らかにされない。そして、街(広島市)を襲ってくる、と云う出所不明の噂がただ続けられるだけであった。
「(くだらん!実にくだらん!)」
(続く)
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