2022年5月11日水曜日

【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方[その225]

 


「そうだ。そう云えばな、『ジェームス・カーティス・ヘボン』(James Curtis Hepburn)の苗字は、もう一人の『ヘップバーン』ともおんなじだったんだが…」


と、『少年』の父親は、話をまたしても『ヘップバーン』に戻してきた。『牛田新町一丁目』のバス停を背にし、家族と共に、自宅へと向っているところであった。


「もう一人の『ヘップバーン』って?」

「『キャサリン・ヘップバーン』だ」

「その人、『ローマ字』の『ヘボン式』の『ヘボン』さんの奥さん?」

「いや、『キャサリン・ヘップバーン』も女優だよ。『アカデミー主演女優賞』を受賞したこともある名女優だ」




「ああ、そうなんだね。『キャサリン・ヘップバーン』も、実は、『キャサリン・ヘボン』、ということなんだね。はい、はい」


と、『少年』は、少々うんざり感を出してしまった。


八丁堀から牛田まで、随分、時間がかかったような気がする、と『少年』は疑問に思ったのであった。八丁堀から牛田まではバスで10分から15分くらいしかかからないのに、そんな時間ではとてもし切れない程のボリュームの話を父親から聞いたことを訝しく思い、その疑問に対し、『少年』の父親は、『アインシュタイン』の『相対性理論』を持ち出し、時間の進み方が遅かったのかもしれない、と答えた。しかし、『少年』はまだ納得できていないからか、『少年』の父親は、『閏年』があること、更には、『閏年』になるはずの年でも『閏年』にならない年もあることから、『1年』という時間は一定ではないと主張したものの、『少年』は、どこか誤魔化されている感を拭えないでいた。そこで、『少年』の父親は、日付変更線を越えることで、『昨日』にも『明日』にも行ける、と説明したかと思ったら、次に、1時間だけだが、日付変更線を越えなくても、『未来』や『過去』に行ける、とまで云い出した。それに対し、『少年』は、未来や過去を絵に描けばいい、そして、その未来を予見するには、自らが未来を創ればいい、と主張し、その慧眼に『少年』の父親は、驚きと共に喜びを表したが、またまた、アメリカやイタリア等は、強制的に1時間先の未来に連れて行かれたり、1時間昔に戻されたりすることがある、それも一瞬にして、と謎のようなことを云い出し、日本でもかつてそうであったことがあり、『4月か5月の第1土曜日の夜中24時に、1時間先の未来に連れて行かれ、9月の第2土曜日の25時になると、1時間昔に戻される』と法律で決められていたと説明した。しかし、『少年』には、『1時間先の未来に連れて行かれ、1時間昔に戻される』その『間』が何であるのか、理解できず、父親に訊いたところ、『サンマータイム』という返事があり、そこから『秋刀魚』という漢字の由来や、『さんま』は一文字の漢字では、魚偏に『祭』と書くこと等、『さんま』の漢字談義へと派生していっていたが、『少年』は、『サンマータイム』とは何か、という疑問に立ち戻り、『サンマータイム』を定めた法律は、正式には、『夏時刻法』と、『少年』の父親は、説明した。ところが、『少年』と『少年』の父親の会話は、そこから、『サンマー』が、実は『サマー』と発音するものであることから、英語の発音談義への移って行っていたのに、父親は、映画『ローマの休日』、そして、その主演女優『オードリー・ヘップバーン』や『ローマ字』の『ヘボン式』へと、また話を派生させていっていた。それをようやく、『少年』は、『サンマータイム』へと話を戻したところであったのだ。


「それはその通りなだが、実はな、『キャサリン・ヘップバーン』は、『サマータイム』とも関係あると云えば、あったんだよ」

「だから、『サマータイム』が、『サンマータイム』に聞こえたり、そう云われるようになったのと同じように、『キャサリン・ヘボン』も『キャサリン・ヘップバーン』のように聞こえたり、そう云われるようになったんでしょ?」

「『旅情』だ」


と、『少年』の父親は、『少年』の質問を無視したかのような言葉を発した。



(続く)




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