2018年2月28日水曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その19]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、『真っ直ぐな』自分は女性に対しても『一途』であったと思った

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「ウオーッ!」

と叫び声を上げて、ビエール・トンミー氏は、上井草のエヴァンジェリスト氏の下宿の『汲み取り式便所』から飛び出した。1979年のことである。

そして、エヴァンジェリスト氏を責めたが、エヴァンジェリスト氏の妙な反論を受けることとなった。

「君は、本当に『曲がったことが嫌いな男』なのか?ココの『便所』は、『鼻が曲がる』じゃあないか!」
「曲がっているのは、君の『お宝』ではないのか?」
「え!?....な、なんで、それを….」
「図星のようだな。右か左か?」
「そんなことはどうでもいい。君はよくあんな『鼻がひん曲がる』便所を使っているな。『曲がったことが嫌いな男』が笑わせるぜ」
「ああ、君は使わなかったのだな」
「は?何を使うのだ?」
「消臭剤さ。便槽に入れるのだ。トイレの隅の方に置いておいたんだがな。消臭剤でダークエネルギーを消滅させるのさ、ハハハハハ」

何がおかしいのか、エヴァンジェリスト氏は高笑いをした。

「何を云っているのか、分からん!もういい、ボクは帰る!」

そう云うと、ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏の下宿の玄関(と云っても、ただ扉があるだけだが)に向った。『汲み取り式便所』の猛烈な臭気が鼻について離れなかったのだ。

ビエール・トンミー氏は、その後、『変態』となるが、『常人』から『変態』へと道を『曲げる』ことになった切っ掛けは、友人の下宿の『汲み取り式便所』であったと考えるのであった。






「じゃあな」

と、息を止めたまま、ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏の下宿の部屋を出た。

草ぼうぼうの庭を通り、ボロボロの木戸を開け、道路に出たが、そこには衝撃がビエール・トンミー氏を待っていた。

エヴァンジェリスト氏の下宿前に止めていたフォルクスワーゲンの『ビートル』のバックミラーに何かかかっていたのだ。駐車違反ロックが付けられていたのである。

「ああ……」

とという吐息と共に、ビエール・トンミー氏は思った。

「アイツのせいだ。あの『汲み取り式便所』のせいだ」

駐車違反が友人のせいでないことは判っていたが、まだ鼻についたまま離れないあの臭気が、ビエール・トンミー氏にそう思わせた。

「はあああ?なーんだい、それ?」

背後からの声にビエール・トンミー氏は振り向いた。

「何、この黄色いの?」

エヴァンジェリスト氏であった。運転免許を持たぬエヴァンジェリスト氏は、駐車違反ロックを知らなかった。

「いいから、放っておいてくれ!」
「はあん?おおお、これ、駐車違反の奴かあ。初めて見た。へええ、こんなんだあ」

と、エヴァンジェリスト氏は呑気に、駐車違反ロックを手に取り、ペタペタさせた。

「それで遊ぶな!」
「ああ、そうだな。これは失敬。これは犯罪の印だものな」
「え!?...犯罪….」
「ああ、犯罪だろ、これって。駐車違反は、犯罪だろ」
「いや、これは…..」
「君は、犯罪者になったんだ」

友人の冷静な言葉に、ビエール・トンミー氏は、その場に立ちすくんだ。





(続く)






2018年2月27日火曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その18]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、広島市内の少年ソフトボール大会の決勝で、9回裏2アウト、ランナーなしの状況から、『振り逃げ』に成功した自分は、次に打者の第1球に、今度も『真っ直ぐに』走り、盗塁に成功したことを思い出した。

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「うーっ!鼻がひん曲がるう!!!アイツめえ!ああ、この臭気の元は大部分、アイツの排出したものなのだあ」

1979年、上井草のエヴァンジェリスト氏の下宿の『汲み取り式便所』でのこと、『用』を足し、自身の『お宝』から放出した『お湯』が立ち上らせていた『湯気』が、しばしの間、臭気をかき消していたが(自身が放出した臭気は臭くない!)、その『湯気』が消えた今、再び、猛烈な臭気がビエール・トンミー氏を襲ったのだ。

急いで、便所の壁に立てかけていた便器カバーを取り、便器に被せた。

しかし、個室の中は、まだ『ダーク・マター』とも呼ぶべき臭気に満たされていた。

息を止めたまま、急いで『汲み取り式便所』の扉を開け、1畳の間の出ると、即、今度はガラス戸を開け、6畳の部屋に戻った。

「ウオーッ!」

ビエール・トンミー氏は、虚空に叫び声を上げた。






「な、な、なんだ?驚くじゃあないか」

エヴァンジェリスト氏は、ただならぬ様子でトイレから戻ったビエール・トンミー氏に、怯えたように声を掛けた。

「君は、本当に『曲がったことが嫌いな男』なのか?」
「ああ、ボクは『真っ直ぐな』人間だ」
「この嘘つきめ!『マルちゃんの赤いきつね』かなんか知らないが、『真っ直ぐ』に並べたり…」
「おいおい、『マルちゃんのカップうどんきつね』『赤いきつね』と混ぜて云うのはよせ」
「ファンシーケースの中も、ジャケットもセーターも歪むことなく、『真っ直ぐ』に並べたり…..」
「おい、ボクのファンシーケースの中を見たのか、エッチ!
読み終えられた新聞紙も、角を綺麗に、一分のズレもなく一直線にして積み重ねたり、と君の『真っ直ぐ』は度を超していると思っていた」
「おいおい、まさか重ねた新聞紙の中の方を見てはいないだろうな?」
「ん?」
「いや、まあ、いい…..それよりも、本当に『曲がったことが嫌いな男』なのか、と云ったかと思えば、『真っ直ぐ』が度を超していると云ったり、君は何を云いたいのだ?」
「ココの『便所』は、『鼻が曲がる』じゃあないか!」
「曲がっているのは、君の『お宝』ではないのか?」
「え!?....な、なんで、それを….」
「図星のようだな。右か左か?」
「そんなことはどうでもいい。君はよくあんな『鼻がひん曲がる』便所を使っているな。『曲がったことが嫌いな男』が笑わせるぜ」
「ああ、君は使わなかったのだな」
「は?何を使うのだ?」
「消臭剤さ。便槽に入れるのだ。トイレの隅の方に置いておいたんだがな」

当時(1979年の頃)、東京では『汲み取り式便所』は数が少なくなっていたはずであるが、まだなくはなかった。地方では、まだまだ『汲み取り式便所』はあったであろう。

その為、便槽に入れるタイプの消臭剤が売られていたのだ。キンモクセイの香りが多かったようにも記憶する。その為、エヴァンジェリスト氏は、今でもキンモクセイの香りがすると、トイレを連想する。

「消臭剤でダークエネルギーを消滅させるのさ、ハハハハハ」





何がおかしいのか、エヴァンジェリスト氏は高笑いをした。

「何を云っているのか、分からん!もういい、ボクは帰る!」

そう云うと、ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏の下宿の玄関(と云っても、ただ扉があるだけだが)に向った。

エヴァンジェリスト氏が訳の分からぬことを云うのに呆れたからでもあるが、それよりも何よりも、『汲み取り式便所』の猛烈な臭気が鼻について離れなかったのだ。

早く『汲み取り式便所』から逃れたかった。ビエール・トンミー氏の鼻は、『ひん曲がった』ままだったのである。

ビエール・トンミー氏は、その後、『変態』となるが、『常人』から『変態』へと道を『曲げる』ことになった切っ掛けは、友人の下宿の『汲み取り式便所』であったと考える。


(続く)



2018年2月26日月曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その17]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、広島市内の少年ソフトボール大会の決勝で、9回裏2アウト、ランナーなしの状況から、いつものように三球三振を喫したが、周りが『走れ!』と云うので、脇見をふらず、一塁まで『真っ直ぐに』走ったら、一塁塁審に『セーフ!』と云われ、『振り逃げ』に成功したんだ、と知ったことを思い出した。

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「ふううーっ……」

1979年、上井草のエヴァンジェリスト氏の下宿の『汲み取り式便所』でのこと、『用』を足し、尿意から解放された心地よい脱力感に浸りながら、ビエール・トンミー氏は、自身の『お宝』を眼下に見た。

そして、やや右に傾、しなだれた『お宝』をいじりながら、

男という者は皆、『お宝』は右か左かに傾いているものなのだ。これは自然の摂理なのだ。アインシュタインか誰かもそう云っていたような気がする」

と『自身』を『慰めて』いたが…….

「うーっ!」

思わず噎せた。

「しまった、忘れていた」

そうだ、見下ろした自身の『お宝』の先には、猛烈な臭気を吹き上げてきている逆ブラック・ホール』とも呼ぶべきものがあったのであった。






自身の『お宝』から放出した『お湯』が立ち上らせていた『湯気』が、しばしの間、臭気をかき消していたが(自身が放出した臭気は臭くない!)、その『湯気』が消えた今、再び、猛烈な臭気がビエール・トンミー氏を襲ったのだ。

急いで、便所の壁に立てかけていた便器カバーを取り、便器に被せた。

しかし、個室の中は、まだ『ダーク・マター』とも呼ぶべき臭気に満たされていた。

ビエール・トンミー氏は、『お宝』や便器カバーを持った左手ではなく、汚れていない右手で自身の鼻をつまんだ。

「うーっ!鼻がひん曲がるう!!!アイツめえ!ああ、この臭気の元は大部分、アイツの排出したものなのだあ」





息を止めたまま、急いで『汲み取り式便所』の扉を開け、1畳の間の出ると、即、今度はガラス戸を開け、6畳の部屋に戻った。

「ウオーッ!」

ビエール・トンミー氏は、虚空に叫び声を上げた。


(続く)




2018年2月25日日曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その16]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、広島市内の少年ソフトボール大会の決勝で、9回裏2アウト、ランナーなしの状況でも、真っ向勝負で三球三振を喫したが、それも『曲がったことは嫌い』で『真っ向』勝負の結果なのだから、そのことを恥はしない、と思った。


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「おおーっ!」

1979年、上井草のエヴァンジェリスト氏の下宿の『汲み取り式便所』の白い便器カバーを取ったビエール・トンミー氏は、余りの臭気に、気を失ってしまいそうになった。

「マズイ!このままでは、『ブラック・ホール』に吸い込まれる」

と、意識をなんとか持ち直し、ズボンの『社会の窓』を開けた。

そして、『窓』から『お宝』を取り出し(『お宝』は大き過ぎる程大きく、ビエール・トンミー氏は、それを『窓』から取り出すのにいつも苦労した)、『お宝』から、やや黄色がかった『水』を『ブラック・ホール』に放出した。

『水』は、『お湯』であったのか、湯気が出ていた。






「ふううーっ……」

尿意から解放された心地よい脱力感に浸りながら、ビエール・トンミー氏は、自身の『お宝』を眼下に見た。

しなだれた『お宝』は、やや右に傾いていた。

「んーむ、これは仕方ないのだ。オレは、『曲がったことが嫌いな男』だ。しかし、他の男の『お宝』をしげしげと眺めたことはないが、男という者は皆、『お宝』は右か左かに傾いているものなのだ。これは自然の摂理なのだ。アインシュタインか誰かもそう云っていたような気がする」




と、『自身』をいじりながら自身を『慰めて』いたが…….

「うーっ!」

思わず噎せた。

「しまった、忘れていた」

そうだ、見下ろした自身の『お宝』の先には、『ブラックホール』があったのだ。

『ブラック・ホール』なら、総ての物質を飲み込んでしまうはずだが、猛烈な臭気を吹き上げてきているソレは、『逆ブラック・ホール』とも呼ぶべきものであった。


(続く)


2018年2月24日土曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その15]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、小学生ソフトボール・チームではライトで9番バッターであた自分は、いつも三球三振であったが、『曲がったことは嫌い』で『真っ向』勝負の結果なのだから悔いはない、と思った。


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「ブラックホールだ!」

ビエール・トンミー氏は、心の中でそう叫んだ。

1979年、上井草(正確には、住所は下石神井であったが)のエヴァンジェリスト氏の下宿でトイレでのことである。

トイレは、和式で、その和式トイレの便器には、白い便器カバーが被せられていた。

その便器カバーをを開けたくはなかったが、ビエール・トンミー氏は、白い便器カバーを左手で取り、思い切って持ち上げたのだ。

「ブラックホールだ!」

しかし、勿論、それは『ブラック・ホール』ではなかった。

『ブラック・ホール』なら、総ての物質をに見込んでしまうはずだが、その『ブラック・ホール』は、猛烈な臭気を吹き上げてきていたのだ。






そう、エヴァンジェリスト氏の下宿のトレイは、『汲み取り式トイレ』であった。いや、『汲み取り式便所』という方が、実態に即しているかもしれない。

「おおーっ!」

白い便器カバーを取ったビエール・トンミー氏は、余りの臭気に、気を失ってしまいそうになった。

「マズイ!このままでは、『ブラック・ホール』に吸い込まれる」

と、意識をなんとか持ち直し、ズボンの『社会の窓』を開けた(当時は、ソレをそう表現したものだ)。

そして、『窓』から『お宝』を取り出し(『お宝』は大き過ぎる程大きく、ビエール・トンミー氏は、それを『窓』から取り出すのにいつも苦労した)、『お宝』から、やや黄色がかった『水』を『ブラック・ホール』に放出した。

『水』は、『お湯』であったのか、湯気が出ていた。





(続く)




2018年2月23日金曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その14]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、自分が小学生ソフトボール・チームにいた頃、変化球を投げることができるような小学生はいなかったからではないが、ライトで9番バッターであった自分は、いつも『真っ向』勝負であった、と思った。


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1979年、上井草(正確には、住所は下石神井であったが)、エヴァンジェリスト氏が住んでいた下宿に、買ったばかりのフォルクスワーゲンの『ビートル』に乗ってきたビエール・トンミー氏は、友人であるエヴァンジェリスト氏をカップうどんのことで怒らせたので、ひとまずトイレに逃げることとした。

しかし、ビエール・トンミー氏は、直ぐにそのことを後悔したは、本当に少し尿意も催してきていたので、

「ええいーっ!」

と、思い切ってトイレの木製の扉を開けた。

トイレは、和式で、その和式トイレの便器には、白い便器カバーが被せられていた。

その便器カバーを取りたくも、カバーを開けたくはなかったが、尿意も増してきていたので、仕方がない。

「ふうーっ」

息を吸わず、ただ吐くだけにして、ビエール・トンミー氏は、白い便器カバーを左手で取り、思い切って持ち上げた。

「ああーっ…..」






そこには、大きな黒い穴が開いていた。

「ブラックホールだ!」

ビエール・トンミー氏は思った。

しかし、勿論、それは『ブラック・ホール』ではなかった。

『ブラック・ホール』なら、総ての物質をに見込んでしまうはずだが、その『ブラック・ホール』は、猛烈な臭気を吹き上げてきていたのだ。





(続く)



2018年2月22日木曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その13]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、自分は小学生ソフトボール・チームにいた頃、変化球を投げてくる相手ピッチャーは嫌いだったが、当時、変化球を投げることができるような小学生はいなかった、と思った。


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1979年、上井草(正確には、住所は下石神井であったが)、エヴァンジェリスト氏が住んでいた下宿は、台所スペース付の6畳一間であったが、6畳の間の横についたガラス扉を開けると1畳のスペースがあった。

その下宿に、買ったばかりのフォルクスワーゲンの『ビートル』に乗ってきたビエール・トンミー氏は、カップうどんのことで友人であるエヴァンジェリスト氏を怒らせ、

「ん、トイレいいかなあ」

とひとまずトイレに逃げることとし、6畳の間の横の1畳のスペースに入った。

しかし、そこには悪臭が充満していた。

その1畳の間に入ると右手に木製の扉があり、その先がトイレになっていたのだ。

「そうだった。ここではトイレを使ってはいけなかったのだ」

ビエール・トンミー氏は、そう思ったが、今直ぐ6畳の間に戻ると、友人に『逃げた』ことがバレてしまう……..

それに、本当に少し尿意も催してきていた。

「ええいーっ!」

思い切って、木製の扉を開けた。

「ああーっ…..」

そのトイレの光景と、更に増した臭気とに、ビエール・トンミー氏は、打ちのめされた。






トイレは、和式であった。

そして、その和式トイレの便器には、白い便器カバーが被せられていた。

その便器カバーを取りたくはなかった。便器カバー自体に触りたくなかったし、何より、カバーを開けたくはなかったのだ。

カバーの下を見たくはなかったのだ。

しかし、尿意も増してきていたので、仕方がない。

「ふうーっ」

息を吸わず、ただ吐くだけにして、ビエール・トンミー氏は、白い便器カバーを左手で取り、思い切って持ち上げた。

「ああーっ…..」






(続く)





2018年2月21日水曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その12]


「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、自分は小学生ソフトボール・チームにいた頃、変化球を投げてくる相手ピッチャーは嫌いだった、と思った。


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1979年、エヴァンジェリスト氏が住んでいた上井草の下宿である。

その下宿は、台所スペース付の6畳一間であったが、6畳の間の横についたガラス扉を開けると1畳のスペースがあった。

カップうどん論争(『マルちゃんのカップうどんきつね』か、『赤いきつね』か、はたまた『どん兵衛』かという論争)で、友人であるエヴァンジェリスト氏を怒らせたビエール・トンミー氏は、

「ん、トイレいいかなあ」

とひとまずトイレに逃げることとし、6畳の間の横の1畳のスペースに入った。

そして、そこでファンシーケース(当時流行りの衣装ケースだ)の中に、ジャケットもセーターも歪むことなく、真っ直ぐに並べられている光景を見た。

そして更に、ファンシーケースの前に、読み終えられた新聞紙が、角を綺麗に、一分のズレもなく一直線にして積み重ねられ、保存されているのを見たビエール・トンミー氏は、思った。

「アイツも自分と同じく『曲がったことが嫌いな男』だとは思っていたが、アイツの『真っ直ぐ』は度を超している」

しかし、視覚から得たその思いは、嗅覚から来た別の衝撃にかき消された。

「しまった!」

思わず、左手の親指と中指とで自分の鼻をつまんだ。

「臭い!」

ビエール・トンミー氏は、自身の行動を悔いた。6畳の間の隣の1畳の間に入ると右手に木製の扉があり、その扉を見ながら、自身の失敗に気付いたのであった。






木製の扉を開けると、そこはトイレになっていたのだ。

扉はまだ開けていなかったが、1畳の間は、トイレの臭気が充満していた。

「そうだった。ここではトイレを使ってはいけなかったのだ」

エヴァンジェリスト氏の下宿のトイレは、ただ臭いのではなかった。猛烈に臭く、そして、その猛烈な臭さは、その構造からきていたのだ。

「トレイに入るのは止めようか」

ビエール・トンミー氏は、そう思ったが、今直ぐ6畳の間に戻ると、友人に『逃げた』ことがバレてしまう……..

それに、本当に少し尿意も催してきていた。





「ええいーっ!」

思い切って、木製の扉を開けた。

「ああーっ…..」

そのトイレを使うのは初めてではなかったので知ってはいたが、そのトイレの光景と、更に増した臭気とに、ビエール・トンミー氏は、打ちのめされた。


(続く)



2018年2月20日火曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その11]


「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、自分は小学生ソフトボール・チームの控えのピッチャーとして変化球を投げたことがないのは、実はピッチャーとして出場したことがないからではあるが、そのことを敢えて誰にも云う必要はあるまい、と思った。


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「ああ、情けない。君の方こそ『曲がったことが嫌いな男』だと思っていたのに。いいか、貧乏学生の憐れな下宿生活を支えてくれたのが、『マルちゃんのカップうどんきつね』なのだ。なのに、それを真似たものに乗り換えることなんて!ああ、情けない!ああ、情けない!」

1979年、友人のエヴァンジェリスト氏が住んでいた上井草の下宿を訪問したビエール・トンミー氏は、

「美味しけりゃ、『赤いきつね』でも『どん兵衛』でもいいだろう」

という迂闊な一言で、友人であるエヴァンジェリスト氏の興奮をいや増してしまった。友人は、極め付けの『マルちゃんのカップうどんきつね』好きであったのだ。

「ん、トイレいいかなあ」

と、ビエール・トンミー氏は、その場から、取り敢えず逃れることとしたが、直ぐにそのことを後悔することとになった。

エヴァンジェリスト氏の下宿は、台所スペース付の6畳一間であったが、6畳の間の横についたガラス扉を開けると1畳のスペースがあった。

ビエール・トンミー氏が、トイレに向かう為、入ったその1畳の間には、ファンシーケース(当時流行りの衣装ケースだ)があり、ジャケットもセーターも歪むことなく、真っ直ぐに並べられていた。

その光景を見、そして更に、ファンシーケースの前に置かれたものを見たビエール・トンミー氏は、思った。

「アイツ、相当ヤバイかも」






ファンシーケースの前には、読み終えられた新聞紙が、角を綺麗に、一分のズレもなく一直線にして積み重ねられ、保存されていたのだ。そんな光景を、他では見たことはなかった。

「アイツも自分と同じく『曲がったことが嫌いな男』だとは思っていたが、アイツの『真っ直ぐ』は度を超している」

と、ビエール・トンミー氏は思った。

しかし、視覚から得たその思いは、嗅覚から来た別の衝撃にかき消された。

「しまった!」

思わず、左手の親指と中指とで自分の鼻をつまんだ。

「臭い!」





そう臭かったのだ。そして、

「そのことを知らないではなかったのに」

と、ビエール・トンミー氏は、自身の行動を悔いた。

6畳の間の隣の1畳の間に入ると右手に木製の扉があり、その扉を見ながら、自身の失敗に気付いたのであった。


(続く)