2018年2月15日木曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その6]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、『運転免許を持っていないから、駐車違反という犯罪を犯したこともないぞ』と思った。


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1979年、エヴァンジェリスト氏が住んでいた上井草の下宿は、上井草駅の北側にある下石神井商店街を抜けた先の民家の離れであった。

エヴァンジェリスト氏の友人であるビエール・トンミー氏は、交差点を満足に曲がることもできないのに、買ったばかりのフォルクスワーゲンの『ビートル』でエヴァンジェリスト氏の下宿まで来た。

ビエール・トンミー氏は、自身が交差点を曲がれないのは、自分が『曲がったことが嫌いな男』だからだ、と自分に言い聞かせた。

そして、エヴァンジェリスト氏の下宿で、友人の本棚に、かなりの数のどんぶり型のカップ麺の空き容器が書籍の前のスペースに、『曲がる』ことなく、真っ直ぐに綺麗に積み重ねられているのを見て、友人も『曲がったことが嫌いな男』であることを確認し、気持ちが良かった。

しかし、1点気になることがあった。

ある『塔』のラベルは、青地に白い文字で『カップうどん』と書かれ、ある『塔』では、赤地に白い文字で『赤いきつね』と書いてあったのだ。

『曲がったことが嫌いな』ビエール・トンミー氏は、カップ麺の種類の不統一が気に入らず、友人に訊いた。

「どうして、『カップうどん』『赤いきつね』とがあるの?」






「ああ、『武田鉄矢』の方が、『千里・万里』よりいい訳ではないが、まあ、仕方あるまい」

エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏には意味不明な回答をした。

「武田鉄矢は知らないことはないが、なんだい、『センリマリ』って?」

ビエール・トンミー氏は、今(2018年)もそうだが、1978年当時も芸能界には興味がなく、『千里・万里』のことを知らなかった。

「海原千里・万里がCMをしていたのが、『マルちゃんのカップうどんきつね』だ」
「ああ、青い方のやつだな。ウナバラセンリマリって、何者か知らんが」
「海原千里・万里を知らぬのか。売れっ子の姉妹漫才コンビだ」

というエヴァンジェリスト氏も、の妹の方である海原千里が、後に上沼恵美子という大変なオバさんタレントになることは想像だにできなかった。




「ということは、武田鉄矢がCMをしているのが、『赤いきつね』ということか。そう云えば、武田鉄矢が出てくる『赤いきつね』のCMを見たことがあるような気がするなあ」

芸能音痴だが、頭の回転のいいビエール・トンミー氏である。

「その通りだ。しかし、どちらかと云えば、『千里・万里』の方に馴染みがあったのに」
「だったら、『赤いきつね』なんて食べなければいいだろう。『マルちゃんのカップうどんきつね』っていうのか、『センリマリ』のCMの方の奴を食べればいいではないか」
「いや、そうもいかないのだ」
「ああ、そうか。君も『曲がったことが嫌いな男』だと思っていたが、『センリマリ』から『武田鉄矢』に乗り換えってことか。ふふん」
「なにいー!」


(続く)


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