2018年2月22日木曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その13]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、自分は小学生ソフトボール・チームにいた頃、変化球を投げてくる相手ピッチャーは嫌いだったが、当時、変化球を投げることができるような小学生はいなかった、と思った。


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1979年、上井草(正確には、住所は下石神井であったが)、エヴァンジェリスト氏が住んでいた下宿は、台所スペース付の6畳一間であったが、6畳の間の横についたガラス扉を開けると1畳のスペースがあった。

その下宿に、買ったばかりのフォルクスワーゲンの『ビートル』に乗ってきたビエール・トンミー氏は、カップうどんのことで友人であるエヴァンジェリスト氏を怒らせ、

「ん、トイレいいかなあ」

とひとまずトイレに逃げることとし、6畳の間の横の1畳のスペースに入った。

しかし、そこには悪臭が充満していた。

その1畳の間に入ると右手に木製の扉があり、その先がトイレになっていたのだ。

「そうだった。ここではトイレを使ってはいけなかったのだ」

ビエール・トンミー氏は、そう思ったが、今直ぐ6畳の間に戻ると、友人に『逃げた』ことがバレてしまう……..

それに、本当に少し尿意も催してきていた。

「ええいーっ!」

思い切って、木製の扉を開けた。

「ああーっ…..」

そのトイレの光景と、更に増した臭気とに、ビエール・トンミー氏は、打ちのめされた。






トイレは、和式であった。

そして、その和式トイレの便器には、白い便器カバーが被せられていた。

その便器カバーを取りたくはなかった。便器カバー自体に触りたくなかったし、何より、カバーを開けたくはなかったのだ。

カバーの下を見たくはなかったのだ。

しかし、尿意も増してきていたので、仕方がない。

「ふうーっ」

息を吸わず、ただ吐くだけにして、ビエール・トンミー氏は、白い便器カバーを左手で取り、思い切って持ち上げた。

「ああーっ…..」






(続く)





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