2018年2月12日月曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その3]


「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いて、エヴァンジェリスト氏は、『曲がる』ということがどういうことなのかを考えた。


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それは、エヴァンジェリスト氏が、まだ27歳であった1982年の冬であった。

会社の同期でスキーに行くにあたり、同期だが4歳年下のオン・ゾーシ氏に頼まれ、オン・ゾーシ氏が皆には内緒で付き合っているニキ・ウエ子さんとクルマで行くのに、同乗、同行することになった。

そして、エヴァンジェリスト氏は、上池袋の交差点近くにある薬局前、公衆電話ボックス横に、茶色のカジュアルなコートのポケットに両手を入れ、肩をすぼめて立っていると、薬局のおばさんが、声を掛けてきた。

「エヴァンジェリストさん、寒いわねえ。そんなとこ立って、どうしたの?」
「あ、今晩は。スキーに行くんです。初めてなんです」
「あーら、じゃあ、気をつけないとね」
「え?」
「楽しんでらっしゃい。体痛めたら、また湿布でも貼ってあげるわ」

そう、エヴァンジェリスト氏は、薬局のおばさんに湿布を貼ってもらったことがあったのだ………

3.75畳の下宿の部屋で、敷きぱなっしの布団を座布団がわりにその上に座り、布団の横に置いた小さな炬燵に足を入れ、炬燵を机に論文を書いていた。『François MAURIAC論』だ。

参考資料は、自身の体の周囲の布団の上に置き、論文を書き進めながら、時々、体を捻って資料をとっていたが、ある時、首筋から背中にかけて激痛が走った。体をひねる姿勢に無理があったのだ。






敷きっぱなしの布団に倒れ込み、エヴァンジェリスト氏は、しばらく息が止まったような状態でいた。

「う、うーっ……」

と微かな声を出すだけで、誰かに助けを呼ぶ声も出すことができないでいた。

…………1979年、エヴァンジェリスト氏は、上井草から上池袋に転居してきた。

上井草駅の北側にある下石神井商店街を抜けた先の(蕎麦屋の『やぶ久』をもう少し行ったところの)民家の離れに下宿していたが、大家のお婆さんが、家を建て直すことになり、引越しをしなくてはならなかったのだ。

エヴァンジェリスト氏の上井草の下宿は、ビエール・トンミー氏が伝説を作った場所である。

買ったばかりのフォルクスワーゲンの『ビートル』で側まで来たものの、エヴァンジェリスト氏の下宿の前の道への交差点を曲がることができなかったのだ。


ビエール・トンミー氏も、『曲がったことが嫌いな男』であった。エヴァンジェリスト氏の『心友』なのだから。


(続く)




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