【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない？入れない？［その９］

「エヴァさん、曲がれるよね？」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、ユリ・ゲラーの出演する番組を見ながら自分も手にスプーンを持っていたことは、誰にも知られないようにしようと思った。

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1979年、エヴァンジェリスト氏が住んでいた上井草の下宿の本棚には、『マルちゃんのカップうどんきつね』の空き容器が積み重ねられ、また、『赤いきつね』の空き容器も積み重ねられていた。

ビエール・トンミー氏は、友人のエヴァンジェリスト氏に、

「君も『曲がったことが嫌いな男』だと思っていたが、『マルちゃんのカップうどんきつね』から『赤いきつね』に乗り換えたのか」

と責めたが、逆襲にあってしまった。

「なにいー！だったら、君も『マルちゃんのカップうどんきつね』を食べてみろ！」

「は！？」

「君は何も分っちゃいない。『赤いきつね』は、『マルちゃんのカップうどんきつね』なのだ『マルちゃんのカップうどんきつね』のパッケージを変えたのが、『赤いきつね』なのだ」

「なーんだ、そういうことか。まあ、『マルちゃんのカップうどんきつね』であろうが、『赤いきつね』であろうがどうでもいいし、『どん兵衛』でもいいではないか」

「なにいー！」

温厚なエヴァンジェリスト氏が、またまた怒りをあらわにした。

（参照：【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない？入れない？［その８］）

「『どん兵衛』だって、『マルちゃんのカップうどんきつね』、『赤いきつね』と同じ丼型の容器に入っているし、何より、『どん兵衛』は日清食品のだろ。日清食品の方が有名じゃないのか？」

「君は本当に何も分っちゃいない。『マルちゃんのカップうどんきつね』、『赤いきつね』を作っている東洋水産だって立派な会社だ。それに丼型の容器のカップうどんを最初につくったのは東洋水産なのだ」

「美味しけりゃ、『赤いきつね』でも『どん兵衛』でもいいだろう」

「ああ、情けない。君の方こそ『曲がったことが嫌いな男』だと思っていたのに。いいか、貧乏学生の憐れな下宿生活を支えてくれたのが、『マルちゃんのカップうどんきつね』なのだ。なのに、それを真似たものに乗り換えることなんて！ああ、情けない！ああ、情けない！」

たかがカップうどんのことなのに興奮がいや増すエヴァンジェリスト氏であった。

「あ！っ」

「は？なんだ？」

「ん、トイレいいかなあ」

気圧されたビエール・トンミー氏は、トイレに逃げることとしたのだ。

しかし、ビエール・トンミー氏は、そのことを後悔することとになった。

（続く）