「エヴァさん、曲がれるよね?」
列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、自分が小学生ソフトボール・チームにいた頃、変化球を投げることができるような小学生はいなかったからではないが、ライトで9番バッターであった自分は、いつも『真っ向』勝負であった、と思った。
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1979年、上井草(正確には、住所は下石神井であったが)、エヴァンジェリスト氏が住んでいた下宿に、買ったばかりのフォルクスワーゲンの『ビートル』に乗ってきたビエール・トンミー氏は、友人であるエヴァンジェリスト氏をカップうどんのことで怒らせたので、ひとまずトイレに逃げることとした。
しかし、ビエール・トンミー氏は、直ぐにそのことを後悔したは、本当に少し尿意も催してきていたので、
「ええいーっ!」
と、思い切ってトイレの木製の扉を開けた。
トイレは、和式で、その和式トイレの便器には、白い便器カバーが被せられていた。
その便器カバーを取りたくも、カバーを開けたくはなかったが、尿意も増してきていたので、仕方がない。
「ふうーっ」
息を吸わず、ただ吐くだけにして、ビエール・トンミー氏は、白い便器カバーを左手で取り、思い切って持ち上げた。
「ああーっ…..」
そこには、大きな黒い穴が開いていた。
「ブラックホールだ!」
ビエール・トンミー氏は思った。
しかし、勿論、それは『ブラック・ホール』ではなかった。
『ブラック・ホール』なら、総ての物質をに見込んでしまうはずだが、その『ブラック・ホール』は、猛烈な臭気を吹き上げてきていたのだ。
(続く)
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